2012年8月16日木曜日

オオカミ

最後にブログを更新して以来あっという間に月日が経ってしまった。半年以上ものブランクの間に実はいろいろなことがあった。生活の根拠をアンカレッジに移したというのも言い訳になるが、それ以上にこの夏はアラスカ各地を撮影のため忙しく動き回っていたというのが、最もらしい理由ということにしよう。
アラスカの夏は本当に短い。長い冬が終わり、やっと雪が解けたと思ったら、あっという間に新緑が顔を出し、夜中まで照り続ける太陽の下でぐんぐん育つ。アラスカの最も美しいく光り輝く時だ。わずか4ヶ月の間に春から夏へ、そして秋へと早送りのように移り変わってしまう。短い夏の間に植物も動物も休みなく働く。人間も同じだ。自然写真家にとっても忙しい季節だ。ひとつの撮影から戻ってくると、写真の編集の終わる前に次の旅に出てしまうから、デスクワークはたまる一方。と、言い訳はこのぐらいにして、本題に移ろう。
6月の中旬、白夜の空の下、アラスカ内陸に向かってパークハイウェイを北上していた。夜中近くになって、ようやく長い長い日暮れが終わり、薄暗くなってきた。アラスカ山脈の険しい山に囲まれた未開の地がどこまでも続くハイウェイを、一匹の犬のような動物が横切った。オオカミだ!
まだ小ぶりな若いオオカミは、足を止めてこちらをじっと見つめた。
バイクを止めても逃げるそぶりを見せない。
しばらくして、ハイウェイ沿いの茂みの中へ消えていったと思ったら、すぐ近くにあるムースの死骸を食べていたのだ。オオカミ撮影のまたとないチャンスに恵まれ、シャッターを押し続けた…。夢中で食べ続けながらも目を上げ周囲に注意を怠らない。黄色い眼がちらりとこちらを見る瞬間、野生に生きるものの鋭さを感じさせられる。
時を忘れ撮影を続けていると、あたりが薄暗くなってきた。若いオオカミは自分の2倍ほどもある死骸を引きずりながら、ゆっくりと茂みの中へ消えていった。
アラスカ見せてくれる夢のような瞬間だった。