2013年2月8日金曜日

夕日に染まるマッキンリー山

 
 
マウント・マッキンリー(現地語でデナリ)を撮影するために、白夜の続く7月に、デナリ国立公園へキャンプに出かけた。北米最高峰のマッキンリー山のあるデナリ国立公園はアンカレッジからは車で約5時間、ビジターセンターからはシャトルバスに乗って、園内のキャンプ場へ向かう。

昨晩の星空がいつの間にか曇り空に変わり、シャトルに揺られて園内の一本道を進むころには、小雨が降り始めてきた。短い夏の間、北米最高峰の峰は毎日のように雲の中に隠れてしまう…。標高6,194 mのマッキンリーは、そのあまりの高さから独自の天候を創り出す。ほんの数時間のうちに、雲を創り出し、姿を被ってしまうのだ。短い夏の観光シーズンに毎日数千人の観光客が訪れるのだが、そのほとんどがマッキンリーの姿を見ることもなく去っていく。

デナリ国立公園唯一の道をシャトルに揺られ数時間、マイル85地点にあるワンダー・レイクキャンプ場にたどり着いた。このキャンプ場の真正面にはマッキンリーがそびえているはずなのだが、目の前に広がるのは灰色の雲の一幕だけ。ここまで曇っていると、この日はマッキンリーの姿を拝めることはないだろうと、すっかりあきらめ気分になった。マッキンリー・バー・トレイルを数時間歩き、キャンプ場に戻ってくる。
キャンプサイトに着く頃から、少しづつ雲が動き出した。雲の間から、少しづつ峰が見え始めた。午後7時を過ぎたとはいえ、真夏のアラスカは20時間以上も日照があるから、まだまだ明るい。マッキンリーを取り巻く雲が少しづつ薄くなっていくのを、その場を離れることなく見つめていた。

雲が動き出して、2時間ほどで、マッキンリー山はその全貌を現した。空全体が次第に晴れ渡り、マッキンリーの向かい側からは太陽も顔を出した。すでに太陽は地平線近くまで傾き、日没間近の暖かい光がマッキンリーの氷河を照らし出した。
 
北極圏に近いここアラスカでは、太陽はゆっくりと時間をかけて地平線に沈む。日が低くなるにつれて、マッキンリー山は黄金色に染まり、ゆっくりと時間をかけてオレンジ色から朱色へと移り変わっていく…。
最後に頂上が桃色に輝き、ゆっくりと色あせていった。

 自然は時には魔法のような瞬間を見せてくれる。