2015年1月5日月曜日

ツール・ド・モンブラン(ヨーロッパ・アルプス)⑤スイス・シャンペ~トリエン

 
アルプスの山岳風景の撮影のため、全長170キロにも及ぶトレイル、ツール・ド・モンブランを歩いた。7月中旬にフランス、シャモニーを出発した時から3日間は雨、予想外の真夏の雪の中、峠を越えることになった。それでも、フランスからイタリアへ、さらにスイスへとカメラ機材とともに歩き、アルプス最高峰・モンブランを様々な角度から撮影に成功した。

スイスの湖畔リゾート地・シャンペにて美しい夕焼けを撮影した翌日、いよいよツール・ド・モンブランのクライマックスといえる〝アルペッタの窓″(Fenêtre d’Arpette 標高2,665 m、トレイル最高地点)という峠を越える…。引き続き見事な快晴だ。

スイスアルプスの峰に囲まれた草原にワタスゲが咲く…。トレイルは徐々に勾配を増し、気が付いたら、ずいぶん高いところまで登ってきていた。

ついに、アルペッタの窓といわれる細長い尾根にたどり着いた。見下ろすと、本当にこの岩肌を登ってきたのかというくらい急だった。わずか数メートルの幅しかない狭い尾根にたくさんのハイカーたちが一息ついていた。峠の反対側から登ってきた人たちも、ちょうどお昼頃ここにたどり着いたところらしい。やっとカメラを取り出して、登ってきた谷を撮影する。

尾根まで登ってきたら、今度はトリエンに向けて反対側の谷へ下る、ということになる。こちら側のトレイルも滑りやすくて急だった。真夏の太陽がじりじりと照り付ける、数日前には雪が降っていたのに…。トレイルと並行して、トリエン氷河が岩肌を流れ、緑の豊かなこちら側の山肌には山野草が鮮やかに咲き乱れていた。

急なトレイルが緩やかになり、トリエンの谷へたどり着いた。パックを投げ出し、氷河から溶け出した流れに飛び込むハイカーたちを尻目に、トリエンの村までひたすら歩き続けた。この日の14㎞はツール・ド・モンブラン全170㎞の中で一番厳しかった。
 
トリエンの村の中心部の丘に建つ鮮やかなピンク色の教会を日没時に撮影する予定だったので、日が暮れるまでに撮影の準備をしなくてはと、急いだ。この旅の計画中に、ガイドブックに載っていたこの教会の写真を見て、ぜひとも夕日のやわらかい光の下でで撮影したいと思った。願いがかない、天候に恵まれたから、良い夕焼けになりそうだ。疲れた足をひきづって、日没前に教会の撮影に最適の場所を探し歩いた。カメラをセットして、日が沈むのを待つ…。太陽が地平線に近づき、赤みを帯びた最後の光が、教会をつつみこみ、背後にそびえるアルプスの峰を明るい朱色に染めた…。期待以上の美しい光景を撮影できた。

次回に続く…。