2017年9月30日土曜日

アラスカ、 マクニール・リバー野生動物保護区(McNeil River State Game Sanctuary)


自然写真を撮り始めたころから、野生に生きるクマの撮影には情熱を持ち続けていた。これまでにクマの集まる国立公園などを数か所訪れて撮影をしてきたけれど、アラスカのマクニール・リバー野生動物保護区は何といってもナンバーワンだ。

マクニール・リバー野生動物保護区はアラスカ州南西、アリューシャン山脈沿いの未開の原野に位置する。クマの集まる滝として最も有名なカトマイ国立公園の北に隣接し、サケの遡上する 7月から8月には、80頭にも及ぶヒグマ(ブラウン・ベア、又はグリズリー)がマクニール川沿いに集まってくる。マクニール川一帯は1967年より野生動物保護区に指定され、狩猟が禁止されている。観光化されたカトマイ国立公園とは違い、マクニール・リバー野生動物保護区は滞在者を1日10名までに限定し、4日間区切りで許可書を出している。この許可書を獲るのが大変難しい。

 7月の下旬、マクニール・リバー野生動物保護区に到着。アラスカの原野ではよくあることだけど、マクニール・リバー野生動物保護区には道路が通じておらず、対岸のキナイ半島から、小型機をチャーターして海を越えることになる。小型機で約1時間半、満潮時のマクニール湾に水上着陸、空からも川沿いに集まるクマたちが見えた。

クマの集まる観察スポット、マクニール滝までは、キャンプ拠点から約3キロ歩く。レンジャー・ガイドに引率され、川を渡り、草原を越えて、マックニール滝まで通った。私たち”滞在者”はキャンプの外に個人で出ることは固く禁止されていて、ガイドの後について、10人一塊になって歩く。クマの目には、個人の人間というよりも、1匹の大きな動物として映るのだ。夏の間、この大きな動物を見慣れているクマたちは、私たちの存在を無視し各自が普通通りの行動を続ける。マクニール湾の浅瀬にはこの時期子グマを連れた母グマが集まっていて、彼らの通過を待つことが度々、滝への3キロの道のりが2時間から4時間もかかった。

ついにマクニール滝に到着。丘の上から初めて滝を見下ろすと、約20頭にも及ぶ巨グマたちが、一堂に集まってサケを獲っている風景は圧巻だった。

グループは半分に分けられ、上下2つある”見学スポット”にひと塊に座って見学する。下のスポットは滝にやってくるクマたちが間近を横切るので、最初は冷や汗ものだった。ちなみに場所は途中で交代する。大型車ほどもある巨大グマが手の届きそうな距離までやってくるけれど、マクニール・リバー野生動物保護区ではクマの観察のプログラムが始まって以来、50年間一度も事故は起こっていないのだ。厳しいルールを守ることによって、クマたちと見学者は一時的に共存している。

 川いっぱいに登ってくるサケを求めて、クマたちは活発に動き回っていた。

獲ったサケを食べると、また川に戻り次を狙う。複数のクマたちが、同時にアクションを繰り広げるから、どのクマを撮影しようかというぜいたくな問題に悩むことになる。

 クマ同士の争いも後を絶たず…。

マクニール滝のフィッシング・スポットは巨大な雄グマの力争いの場。まだ若いクマたちや、子熊を連れた母グマたちは競争率の低い河口や湾沿いに集まっていた。母グマが湾の浅瀬で獲物を追いかけている間、子グマたちは岸辺で遊んだり昼寝をしていた。滝への往復の途中に、立ち止まりクマの一家を撮影することもしばしば。兄弟同士で遊ぶ子グマたちを間近で見ることができたのは、この旅でのボーナスとなった。

マクニール滝での4日間、撮影した写真は数千枚…。ダウンロードして、選出するだけのプロセスに1か月以上もかかった。編集作業を始めてすでにひと月が過ぎたけれど、まだまだこれから数か月コンピューターに向かうことになるだろう。これから少しづつブログに掲載していく予定なので、気長にお待ちください。