2018年3月11日日曜日

アラスカ、 マクニール・リバー野生動物保護区③(McNeil River State Game Sanctuary)-サケを食べるヒグマ


前回のブログからの続きで、今回もアラスカ、マクニール・リバー野生動物保護区から、川を遡上するサケを求めて集まるグリズリー・ベアの写真を紹介します。(といっても、前回の記事からかなり時間が経ってしまったが…)

アラスカの短い夏の間、動植物は生命に満ち溢れる。白夜の長い日照時間の下、植物はぐんぐん成長し、冬眠から目覚めた動物たちはひたすら食べ続け、子孫を残し、再び訪れる長い冬に向けて備える。アラスカ南西部のマクニール川には、サケの獲物を求めて数十頭にも及ぶ巨大なクマたちが集まってくる。産卵のため生まれ故郷の川いっぱいに上ってくるサケたちは、急流が続くマクニール・リバー滝を乗りえるために、一時的にスローダウンする。そこで待ち構えているクマ達は、次から次へとサケのごちそうにありつく。これだけたくさんのクマたちが一堂に集まる場所は世界でも大変珍しくい。

この短いサケの遡上のシーズンの間に、クマたちは1日に20匹を超えるサケを捕食する。長い冬眠生活に向けて、栄養分を蓄えておくために、必至だ。10頭を超えるクマたちが滝周辺に集まり、それぞれのスタイルでサケを捕まえるのだけれど(前回のブログを参照)、捕らえた後の食べ方にもまた個性があって面白い。

ほとんどのクマたちは、捕まえたサケを岸部まで運んで摂食する。このハンサムなクマは体から水を振り払うと浅瀬にて寝ころび、長い爪でサケを押さえつけて、皮をはぎ取る。次に頭をかみ砕き、栄養分の高い卵‐イクラをむさぼる。このクマは時間をかけて、獲物を楽しんで食べていた。

このクマは獲物を捕るとまた同じ場所に戻ってきて、カメラの前でおいしそうに食べることを数回くりかえす。このクマを見ていると、2006年の夏に、カトマイ国立公園にて撮影した ‶Feast Time″を思い出した。(興味があったら、このリンクで見てください)

川の中ほどにあるこの岩は、‶クマの食卓″として常に数頭のクマたちが、獲物を持ち寄って食べる場所になっていた。食事中のクマたちから少し離れた場所で、食べ残しを待つクマ、奇声を上げながら頭上を舞うカモメ…。

真夏の太陽の下、水浴を楽しみながらのんびりと食事をするクマ。

捕らえたサケを急いで丘の上まで運ぶまだ小柄な若いクマ。弱肉強食の世界では、体格のいい優性のクマが、弱者から獲物を奪い取るということもしばしばある。

サケを捕らえた場所を動かずに食べるタフなクマ。急流の中、もがく魚を前足一本で抑えつけ、大急ぎで食べると、再び獲物を追う。なわばりを守りつつ、時間を無駄にしない。

マクニール・リバーにやってくるクマたちは皆サケをとるのがうまいかと思うとそうでもない…。中には、残り物あさり専門家もいる。捕った魚をおいしそうに食べるクマに近寄り、じっと見つめ続けるこのクマ。じりじりと近寄り、ひたすら食べ終わるのを待つ。無視して食べ続けるクマ、居心地が悪くなって食べかけで移動するクマなど、性格が垣間見える。

マクニール・リバーで過ごした4日間は、アラスカ南西部では珍しいほどの晴天に恵まれた。氷河から溶け出したマクニール・リバーは太陽の下で青緑色に輝き、撮影に最適のはずなのだが…、滝にたどり着くころには太陽が頭上高くまで登り、光と影のコントラストが強すぎた。強い日差しの下、クマの目のあるくぼみ部分は陰になってしまう。後ほど、多少の調節はできるものの、本来野生動物の撮影には早朝と夕暮れ、あるいは曇り空が好ましい。とはいえ、マクニール・リバー野生動物保護区をピーク時に訪れ、撮影をするという貴重な体験をさせてもらった。

数千枚にも及ぶ写真の中から厳選し、編集作業続行中。次回もまた、マクニール・リバー野生動物保護区より、野生に生きるグリズリー・ベアたちの写真を紹介させていただきます。