人口わずか3,000人のピータースバーグの主な産業は漁業で、港には釣り船がところ狭しと停泊し、住民のほとんどは何らかの水産業に係わっている。この小さな町はもともとノルウェイから移民した漁師たちによって開かれた町だ。
町中には今でもノルウェイ・スタイルの住宅がたくさん残っていて、ノルウェイ系の漁師たちが代々同じみの海に釣り船を出している。
ピータースバーグも南東アラスカの例にもれず雨が多いとは聞いていたものの、到着したその日はこの旅最高の夕焼けに恵まれた。普段は雲の中に隠れているカナダ国境沿いの高峰デビルズ・ムも姿を現していた。
トンガス国有林の森が小さな町の後ろに迫るピータースバーグには湿原が目立ち、深い原生林に囲まれたケチカンと比べてオープンな感じがする。ここではじめて小さな青い花“忘れな草”(Foreget-Me-Not)を見かけた。忘れな草はアラスカの州花だ。
道端に咲くその花を撮影していると、沢から突然小さなカワウソが顔を出した。カワウソの方もびっくりしたらしく、一目散に逃げていく…。近くの巣穴らしい木の根元に隠れて、こちらの様子をうかがっている。再び姿を現すのをしばらく待ったけれど、すばやく飛び出し、見事にどこかへ身を隠してしまった。
翌日、友人の船でフレデリック海峡を渡り、小さな入り江に入る。干潮で現れた海岸線の藻の色が美しかった。
ラコンテ氷河から溶け出した氷山がいくつか海峡に浮かび、太陽の光を浴びてアクアマリーン色に輝いていた。
港に戻ると日が出ているうちにノルウェイ移民の建物を撮影して歩いた。その日の夕日は、ピータースバーグに到着した日ほど赤く染まらなかったけど、十分美しかった。
次の目的地は、ゴールドラッシュの面影の残るスキャグウェイだ。