観光客で込み合う町を後にし、Deer Mountain へハイキングに向かった。苔に覆われた深い森は新緑の季節・・・、様々な緑が森中を覆っている。台地をおおう苔までが明るい黄緑だ。ちょうどこの時期は水芭蕉に似ている“スカンク・キャベツ”の花が水辺に沿って、黄色い大きなラッパのような花を咲かせていた。スカンク・キャベツとはよく言ったものでこの花からは独特の匂いが漂っている。
岩をおおう緑の苔を流れる小さな滝は、日本庭園を想わせるものがある…。
次の数日間はアラスカ先住民の文化を訪ね歩いた。雨の中訪れたトーテム・バイト州立歴史公園では、幸運にも他の観光客にまったく出会うこともなく、静かに一人で森の小道を歩き、トーテムポールの立ち並ぶ海辺を散策できた。ひと気のないクランハウス(先住民の集会小屋)にただ一人座っていると、不思議にも神秘的なものを感じてしまう。また、浜辺からトーテムポールの立つ村を見ると、その昔旅人が海からカヌーを漕いでやってきて、小さな集落に出会ったような錯覚を覚えてしまう。
アラスカ先住民の子孫たちは、顔立ちや体系が驚くほど日本人に似ているのだ。はるか昔、日本人を含むアジアの人々の祖先が氷河期に海を渡り、アラスカに移住したという説があるが、それが納得してしまうほど似ているのだ。公園を後にするころ、クルーズ船からやってきた観光客の一団が大型バスからぞろぞろと降りてきた。あたりの雰囲気が一変するのを感じた。
トンガス・ハイウェイの終点、Settlers Cove(セトラーズ湾)のトレイルを歩いた。コケに覆われた深い森は南東アラスカの大部分を占めており、一帯がトンガス国有林に指定されている。
森の中を流れ落ちる滝に遭遇…。
ひと気のない海岸線。干潮で海藻類に覆われた岩が露出している…。
午後8時過ぎ、夕日がべトン島の後ろに沈んだ。
翌朝は再び干潮で、無数の海の生き物が浜辺に現れた。様々な色・形のヒトデ…。特にサンフラワー・スターと呼ばれる20本以上の足を持つ大型のヒトデが数え切れないほど露出していたのには驚きだった。
ケチカンはアラスカ先住民文化と、自然が調和した美しい町だ。次はケチカンから北へ約150キロの小さな港町ピーターズバーグへ向かう。