紅葉に染まるデナリを撮影するために、5日ほどキャンプをした。アラスカ内陸の天気は変わりやすく、北米最高峰のデナリ(旧マッキンリー)はすぐに雲の中に隠れてしまう。5日くらい滞在すれば、夕日に染まるデナリを一度ぐらいは撮影できるだろうというつもりで計画したのだけど、記録的な好天に恵まれて、滞在中ずっと白い雄姿を披露し続けてくれた。
8月末のデナリはすでに秋。青空の下、ツンドラの大地は明るいオレンジ色に輝いていた。短い夏が終わり、長い冬が訪れる前に自然が見せてくれる最も美しい瞬間だ。
湖面にうつるデナリの峰。
全長6キロのワンダー・レイクとデナリ。
山の頂上から見下ろした湖、そして背後にそびえるデナリ。この風景を撮影するためにツンドラの藪をかき分け、急な山肌をひたすら登った。ここからの眺めは格別、個人的に一番のお気に入りだ。真昼間の日差しは強すぎ…。次回はここで夕日に染まるデナリを撮影したい。
日没の二時間前に、お目当ての場所に到着。夕日に染まるデナリの撮影も5日目、滞在最後の晩は夕日に染まったデナリが湖に映る瞬間を撮影したい、と気合を入れてセッティング。太陽が地平線に傾いていくのを待つ。幸い、風が収まってきて、湖面のさざ波が少しづつ落ち着いてきた。白く輝いていたデナリの峰が、黄金色に染まる。そして少しづつ赤みを増し、明るいオレンジからピンク色に刻々と変わっていく…。日没直前には峰全体が明るいバラ色に輝いた。湖の表面は鏡のようにデナリの峰を映し出していた。この日の夕日は5日間の中でも最も色鮮やかだった。あまりにも完璧な光景だった。15年前、デナリ国立公園でひと夏を過ごしてから、このイメージを撮影するためにキャンプすること数回、ついに成功!
キャンプに戻るころにはすでに辺りは暗くなていた。暗くなると同時に、オーロラが空を舞い始めた。緑の光が天空で波打ち、渦を巻いた。そして、淡い光がデナリ上空に広がった。
翌朝、湖畔で撮影をしていると、一等のカリブーがツンドラを食んでいた。あまりにも静かで、近くに来るまで気が付かなかった。大きな角の頭を上げて、こちらをちらりと見たけれど、全く気にする様子もなく、ゆっくりと目の前を横切っていった…。
今回のデナリでの撮影はあまりにも完璧すぎた。奇跡的な好天のおかげで、休む暇もなく撮影を続けることができた。デナリの神秘的なまでの美しさに、また惚れ直してしまった。
次回もデナリの写真を紹介します。ぜひ見てください!