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2016年10月30日日曜日

アラスカ・デナリ国立公園、北米最高峰マウント・デナリ(マッキンリー)


 紅葉に染まるデナリを撮影するために、5日ほどキャンプをした。アラスカ内陸の天気は変わりやすく、北米最高峰のデナリ(旧マッキンリー)はすぐに雲の中に隠れてしまう。5日くらい滞在すれば、夕日に染まるデナリを一度ぐらいは撮影できるだろうというつもりで計画したのだけど、記録的な好天に恵まれて、滞在中ずっと白い雄姿を披露し続けてくれた。

 8月末のデナリはすでに秋。青空の下、ツンドラの大地は明るいオレンジ色に輝いていた。短い夏が終わり、長い冬が訪れる前に自然が見せてくれる最も美しい瞬間だ。

 湖面にうつるデナリの峰。

 全長6キロのワンダー・レイクとデナリ。

 山の頂上から見下ろした湖、そして背後にそびえるデナリ。この風景を撮影するためにツンドラの藪をかき分け、急な山肌をひたすら登った。ここからの眺めは格別、個人的に一番のお気に入りだ。真昼間の日差しは強すぎ…。次回はここで夕日に染まるデナリを撮影したい。

 日没の二時間前に、お目当ての場所に到着。夕日に染まるデナリの撮影も5日目、滞在最後の晩は夕日に染まったデナリが湖に映る瞬間を撮影したい、と気合を入れてセッティング。太陽が地平線に傾いていくのを待つ。幸い、風が収まってきて、湖面のさざ波が少しづつ落ち着いてきた。白く輝いていたデナリの峰が、黄金色に染まる。そして少しづつ赤みを増し、明るいオレンジからピンク色に刻々と変わっていく…。日没直前には峰全体が明るいバラ色に輝いた。湖の表面は鏡のようにデナリの峰を映し出していた。この日の夕日は5日間の中でも最も色鮮やかだった。あまりにも完璧な光景だった。15年前、デナリ国立公園でひと夏を過ごしてから、このイメージを撮影するためにキャンプすること数回、ついに成功!

 キャンプに戻るころにはすでに辺りは暗くなていた。暗くなると同時に、オーロラが空を舞い始めた。緑の光が天空で波打ち、渦を巻いた。そして、淡い光がデナリ上空に広がった。

翌朝、湖畔で撮影をしていると、一等のカリブーがツンドラを食んでいた。あまりにも静かで、近くに来るまで気が付かなかった。大きな角の頭を上げて、こちらをちらりと見たけれど、全く気にする様子もなく、ゆっくりと目の前を横切っていった…。

今回のデナリでの撮影はあまりにも完璧すぎた。奇跡的な好天のおかげで、休む暇もなく撮影を続けることができた。デナリの神秘的なまでの美しさに、また惚れ直してしまった。

次回もデナリの写真を紹介します。ぜひ見てください!


2015年10月3日土曜日

9月のオーロラ2‐ アラスカ、トック


 白夜の季節が終わり、夜の暗闇が戻ってきた8月半ばから、オーロラが活発に北の空を舞い始めた。9月に入って間もなく、明るいオーロラを求めて、アンカレッジから北へと向かった。フェアバンクス近郊に現れたオーロラは、休むことなく活発に空を駆け巡った。(前回のブログ)

 翌日、アラスカ東部、カナダ国境近くまでやってきた。雲一つない青空の下、人里から遠く離れた丘の上にキャンプを設置して、オーロラを待つ。 地平線にゆっくりと陽が落ち、空が薄暗くなり始めるのを待っていたかのように、オーロラはすでに北の空に弧を描いていた。空が暗くなるにしたがって、オーロラは明るさを増し、ゆらゆらと動き始めた。光はカーテン状になって空を横切り、反対側の地平線まで伸びきった。

 まるで、極北の川を登るサケのような形になった。

その夜も、明るいオーロラは一晩中、休むことなく動いていた…。

 火山の噴火のように、大地から湧き出す激しい緑色の光。

 天空で炸裂するオーロラ。

 明るく激しい光が、休みなしに動いている。

不死鳥のようなオーロラ。

見事なオーロラは、空一面に広がる…。

内陸アラスカの大地は紅葉の真っただ中。短い夏の間に成長した植物が、燃え尽きる最後の輝きとばかりに大地を鮮やかな紅色に染める。北の地が最も美しく輝く季節だ。まだ冬の訪れには少し早い。この時期のオーロラの撮影は、寒さを気にせず楽しめるのがいい。

次回は、紅葉に染まるアラスカの原野の写真を紹介予定。一週間後ぐらいに、またチェックしてください。

2015年9月26日土曜日

9月のオーロラ ‐ アラスカ, フェアバンクス


白夜の季節が終わりに近づいて、夜の暗闇が戻りはじめる8月中旬、オーロラが再び空を舞い始める。この時期には珍しく、明るいオーロラが連日のように秋の夜空を照らし出していた。アンカレッジからでさえ肉眼で見えるほどのオーロラがすでに何度も出ている。

アンカレッジから見えるほどのオーロラが出るということは、北極圏に近い北へ行けば行くほど、活発で強いオーロラが見えるのだ。

9月初旬、カメラ機材とキャンプの準備をして、北へ、フェアバンクス方面に向かった。北へ向かうにしたがって天気は回復し、フェアバンクスに着くころには雲一つない最高の天気の恵まれた。

深夜零時ごろから薄いオーロラが出現。オーロラは次第に明るくなり始め、緑色の光のアーチが空をうねり始めた。湖の湖畔で撮影を始めるころには、明るいオーロラが空を駆け巡り、月と一緒にダンスを踊っていた。風もなく静かな夜空を、光のリボンは活発に動き回っていた。

今やオーロラは空全体に広がっていた。地平線からうごめく光が空を横切り、天空で波打つ。次第に薄くなっていくころには、また別の光が、地平線から出現する。終わりのない見事なショーが続いていく…。

明るい炎のような光が湖上に出現…。炎の先から光の矢が生まれ、空を駆け抜ける。

オーロラのショーは休むことなく続く。場所を移動し、もう一つの湖に着くころには、空はますます明るく照らされ、滑らかな湖面は鏡のように、明るい緑の光を映し出していた。湖に映るオーロラを撮影できるのは、湖面が凍結する前のこの時期だけ、ほんの短い間なのだ。様々な場所でオーロラを見てきたけれど、この日のオーロラは特別だった。光が地平線から真上、さらに反対側の地平線まで広がって、休むことなく動いていた。

 波のようなオーロラ。

 天空で渦を巻く光。

湖面の霧と緑の光が混ざり合って、幻想的な光景になった。

翌日、アラスカ東部、カナダの国境近くのトック(Tok)まで足を延ばした。その夜も見事なオーロラが、日暮れとともに空を駆け抜けた。次回は、トック北部で撮影したオーロラの写真を掲載予定。1週間後ぐらいにチェックしてください。


2014年10月2日木曜日

オーロラの季節

 
9月下旬、アラスカはすっかり晩秋。白夜の季節が終わり、夜の暗闇が戻ってきた。早くもオーロラの季節がやってきた。2週間ほど続いた雨が止み、久しぶりの快晴。オーロラの活動も活発で、北極圏周辺はもちろん、アンカッレジ北部でも見られるという予想。

アンカレッジから北へ100キロほどの湖のほとりでオーロラを待っていた。この時期はまだ暖かく、湖の水もまだ凍っていない。水面にうつるオーロラを撮るなら、この季節だけだ。あと1-2週間もすれば、氷が張り始めてしまう。晴れ渡った空には肉眼で天の川が見えるほどの明るい星がきらめき、風ひとつない湖面にも星空が広がっていた。
 
すでに午前2時を過ぎた頃、地平線にうっすらとした光が現れはじめた。光は少しづつ明るさを増し、淡い緑のアーチになった…。アーチ状のオーロラは、波のようにゆっくりと揺れながら、湖の上に移動していった。鏡のような湖面にも、光の帯が揺らめいている。光は徐々に明るさを失い、ゆっくりと消えていった。また新しいアーチが現れ、明るさを増し、光の帯を湖面に描き、また消えていった…。現れては消える、という静かなオーロラのショーが静かなアラスカの原野で人知れずに繰り返されていた。オーロラの再来は、これからやってくる長い冬の始まり…、大地が雪に覆われる日もそう遠くない。
 
次回は、ヨーロッパ・アルプスの写真を掲載予定。

2014年4月2日水曜日

マッキンリー上空に舞うオーロラ


厳しい寒さの続く2月初旬、アラスカからカナダ、さらにアメリカ本土にまで実事なオーロラが出現。この時を待っていた。北米最高峰マッキンリー山上空に舞うオーロラを撮影すべく、アンカレッジから北へ向かった。幸い、空は見事に晴れ渡り、雲ひとつない。早くも午後9時ごろから北の空にうっすらとオーロラが弧を描き始めていた。こんなに早く出ているということは、良いオーロラの夜になる前兆だ。

アンカレッジから約2時間ほど北上すると、マッキンリー山の南壁が見え始める。絵葉書やガイドブックなどで有名なマッキンリーの写真のほとんどは、デナリ国立公園内の北側から撮影されたものが多いのだが、その有名な北壁の見える一角は、冬の間零下50度を下回る厳しい原野にあり,園内唯一の未舗装道路も深い雪の下に隠れ閉鎖されている。極地の冬に旅慣れていて、犬ゾリかスノーモービルの達人でもない限り、真冬のデナリの原野を訪れるのには限界がある。今回は、アクセスしやすい南側からの撮影になる。 


ようやくマッキンリー山の見える場所にたどり着いた頃には、うっすらと出ていたオーロラがさらに薄くなり、消えてしまった。 

アラスカ山脈を一望できる場所に移動したものの、オーロラは一向に現れない…。夜11時を過ぎ、寒さが増してきた。見事な星空の下で30分ほど待っていたが、空は静まり返ったままだ…。とりあえず、車まで戻って待つことにする…。長い長い夜が始まった。 

翌朝5時、ついにオーロラが出始めた。防寒具を身につけ、カメラ機材を背負い、すでに選んでおいた場所へとトレイルを走る。空には薄い緑色のオーロラがゆっくりと光の筋を伸ばし、ゆらゆらと動き出した。


一晩中頭上を照らしていた明るい月が沈むと、辺りは急に暗くなり、オーロラが輝きを増した。緑色の光のカーテンの下に、淡いピンクが肉眼でも見えた。
見事な光のカーテンがマッキンリーをはじめとするアラスカ山脈の上空に舞い続けた。あまりにも完璧なショーを目前にひたすらシャッターを切り続けた。 

マッキンリーの上をドラゴンが舞う。 

オーロラの見事なショーは1時間ほど続き、早朝6時ごろうっすらと消えていった…。

2013年3月17日日曜日

アンカレッジ上空にオーロラ出現

 
昨年から今年にかけてはオーロラの当り年!オーロラの原因となる太陽風の噴出には12年周期の波があるのだが、ちょうどこの1、2年はピークにあたる年と言われている。オーロラは緯度の高い北極圏の周辺に出やすい。北極圏から約500キロ南のフェアバンクスに住んでいた時は天気にもよるけれど、週に数回オーロラを見ることができた。フェアバンクスから500キロ南のアンカレッジともなるとオーロラの出現はさらに減ってしまう。それでも年に数回太陽風の活動と地球の磁気風が活発になった時、アンカレッジをはじめアラスカ南部からカナダ、本土のコロラド州でもオーロラを見られることがある。
 
そんな現象の重なったある夜、アンカレッジ上空に明るい緑のオーロラが現れた。しかも、オーロラ出現の時間帯には早い午後8時ごろ、私の住む住宅街の上空ををうねるように舞っていた。街の明かりの中からでもはっきりと見えるくらいだから、よほど強いオーロラなのだろう。
 
また別の日、アンカレッジの南側に位置するクック入江上空にもきらめくようなオーロラが出現した。
長い冬の季節にも終わりが近づき、間もなくアラスカに春がやってくる。日照時間が日に日に伸び(一日5分づつ長くなっている)、夜の闇も白夜に追いやられていく。オーロラの季節に終わりが訪れようとしている…。

2012年9月18日火曜日

北極圏

始めてアラスカに来た10年以上も前から"北極圏"という響きに憧れていた。正式には北緯6633分以北の地を北極圏というのだが、ブルックス山脈の原野から果てしなく続くツンドラ地帯、北極海までの地域などが含まれる。夏の間は白夜が続き、植物は24時間の太陽の下グングンと成長し、この地に生きる動物たちは短い夏の間、休む間もなく食餌を取り、子作りに励む。このかけ離れた極北の地を北へ貫く一本の道がダルトン・ハイウェイという未舗装道路で、フェアバンクスからスティーズ・ハイウェイそしてエリオット・ハイウェイを経て、計800キロ、北極海に面するプルドー湾へ行き着く。アンカレッジからは1,350キロもの行程になる。
8月中旬、アンカレッジを発ち、北へ向けての旅が始まった。まだ夏の気配が残るアンカレッジから北上すること約550キロ、フェアバンクス周辺ではすでに秋が始まりかけていた。白樺に似た、バーチの森が鮮やかな黄色に変わり始めていた。フェアバンクスから126キロ、いよいよダルトン・ハイウェイにさしかかるといきなり未舗装の砂利道になった。ユーコン川を越えたあたりから、パイプラインがハイウェイ沿いを平行して走るようになる。北極圏に入った辺りから森が開け、ツンドラと呼ばれる永久凍土の湿原が続く。無数の川や湖が点在するツンドラまでが、黄金色に紅葉し、北に行けば行くほど季節の進みの早さを感じさせられた。

ゴールドラッシュの町として始まったコールドフットは、今では大型トラックの休憩所として知られている。プルドー湾の石油基地デッドホースとアンカレッジを往復するトラックにとって、最後の町に当たるコールドフットにはレストラン、ホテル、ガソリンスタンドや売店などがそろっている。
ダルトン・ハイウェイのハイライトに当たるのはコールドフットから北に広がる大自然だ。ブルックス山脈の険しい峰が続き、北極圏の扉国立公園(Gate of The Arctic National Park & Preserve)や北極圏国立野生動物保護区(Arctic National Wildlife Refuge) などの自然保護区がハイウェイ沿いに広がる。ここまで北上すると、ツンドラの紅葉もピークを迎え、黄金色から紅色の丘が、秋の日の下で鮮やかに輝いていた。
アティガン峠(Atigun Pass) から北側の川は北極海に流れ込み、南側の川は太平洋に注ぎこむ。この辺りがダルトン・ハイウェイ沿いで最も険しく、最も美しいところだ。
 
ブルックス山脈の高峰がダルトン・ハイウェイの両側にそびえ立つ一角に、北極圏国立野生動物保護区(Arctic National Wildlife Refuge)を垣間見ることができた。この保護区はカリブー(野生のトナカイ)の繁殖地、および北極グマ、ジャコウウなどの希少動物を保護するために指定された。大手石油会社があきらめることなく数回にわたってこの地の開発を求め、自然保護団体がその度に提案を阻止するという政治的闘争が続いている。この地のことを知ったのは、まだ日本に住んでいた十代の頃だったが、なぜか見たこともない極北の地が破壊されてしまうかもしれないということに胸を痛めたのだ。アメリカ本土に住んでいる間も、シェラクラブを始めとする自然団体のこの地を守る活動に何度も署名してきた。ずっと気になって想いを寄せていた北極圏国立野生動物保護区の一角が自分の目の前に広がっているということが信じがたかった。保護区内の山脈をこの日最後の太陽が暖かい光で照らし出し、空を淡い桃色に染めてゆっくりと沈んでいった。極北のこの美しい一帯が人間の欲のために開発されることがなく、未来に残されていくことを強く願う。
ブルックス山脈の北部、カリブーが紅葉のツンドラの丘を横切る…。
白夜の季節が終わりを迎え、夜の闇が数時間だけ訪れる。北極圏の空にオーロラの季節が戻ってきた。
(次回に続く。)