3月の初め、見事なオーロラが二夜にわたってアラスカ中の空を明るく照らし出した。
北極圏に近いここフェアバンクスでは、緑白色の明るい光が天を駆け抜け、満月に近い月と明るさを競い合っていた。
燃えさかる炎のような光が天をうねり、肉眼で見えることは珍しい紫の光が、緑のカーテンの縁をフリルのようにに飾っていた。天頂ではコロナと呼ばれるオーロラが花火のように天から降り注いだ。
アラスカ先住民の間には、古くからオーロラにまつわる伝承のようなものがたくさん存在している。なにしろ明るい光が天を覆うのだから、多くの人達がオーロラを恐れていた…。興味深い伝承のひとつとして、亡くなった先祖の霊たちが空を駆け、球技をしているのがオーロラとなって現れるという話がある。球技の玉として使われているのは、大型海洋動物・トドの頭蓋骨だという。
南東アラスカの旅に出ることになった。現在フェリーでウィティアを離れ、アラスカ州都・ジュノーに向かう途中だ。ジュノーから、また別のフェリーに乗り換え、南東アラスカで最も美しいといわれているシトカへ向かう。シトカに1週間滞在し、撮影を行う予定だ。シトカからの最新の写真とエッセイは、ブログにて。