アンカレッジから約2時間ほど北上すると、マッキンリー山の南壁が見え始める。絵葉書やガイドブックなどで有名なマッキンリーの写真のほとんどは、デナリ国立公園内の北側から撮影されたものが多いのだが、その有名な北壁の見える一角は、冬の間零下50度を下回る厳しい原野にあり,園内唯一の未舗装道路も深い雪の下に隠れ閉鎖されている。極地の冬に旅慣れていて、犬ゾリかスノーモービルの達人でもない限り、真冬のデナリの原野を訪れるのには限界がある。今回は、アクセスしやすい南側からの撮影になる。
ようやくマッキンリー山の見える場所にたどり着いた頃には、うっすらと出ていたオーロラがさらに薄くなり、消えてしまった。
アラスカ山脈を一望できる場所に移動したものの、オーロラは一向に現れない…。夜11時を過ぎ、寒さが増してきた。見事な星空の下で30分ほど待っていたが、空は静まり返ったままだ…。とりあえず、車まで戻って待つことにする…。長い長い夜が始まった。
翌朝5時、ついにオーロラが出始めた。防寒具を身につけ、カメラ機材を背負い、すでに選んでおいた場所へとトレイルを走る。空には薄い緑色のオーロラがゆっくりと光の筋を伸ばし、ゆらゆらと動き出した。
一晩中頭上を照らしていた明るい月が沈むと、辺りは急に暗くなり、オーロラが輝きを増した。緑色の光のカーテンの下に、淡いピンクが肉眼でも見えた。
マッキンリーの上をドラゴンが舞う。
オーロラの見事なショーは1時間ほど続き、早朝6時ごろうっすらと消えていった…。