2014年12月11日木曜日

ツール・ド・モンブラン(ヨーロッパ・アルプス)④イタリア・エレナ~スイス・シャンペ

アルプスの最高峰・モンブランを一周するツール・ド・モンブランのトレイルを歩き始めて1週間が過ぎた。フランス側を出発してから最初の数日は雨が降り続き、4日目の峠では 、真夏の雪に降られてしまった。フランス-イタリアの国境を越え、イタリア側に入って、やっと太陽が顔を出し、撮影が出来るようになった。朝日を浴びて紅色に輝くモンブランとグランド・ジョラスの撮影に成功、次はスイスの国境に向けて出発。

フェレの谷を染める朝日を撮影してから、イタリア-スイス国境のグランド・コル・フェレ(Grand Col Ferret)の峠に向けて、ひたすら登る。撮影機材の入ったパックの重みが肩と腰にかかる…。高度が増すにしたがって、山の上部に少しだけ残る氷河が間近に迫ってきた。
 

国境を越え、ついにスイスへ入る。スイス・バル・フェレの谷はまたしても、放牧地。谷から丘までが、緑に覆われていた。

フェレの集落、氷河を抱く山を見上げる小さな教会。

フーリー村(La Fouly)に到着。いかにもスイスらしい山小屋風の建物に花、雰囲気が素敵だ。

翌日も見事な快晴、朝日に染まる氷河(I'A Neuve Glacier)を撮影後、フェレの谷を歩く…。

草原に咲く大きな野草。

プラズ・デ・フォートの集落を通過。古い民家と路地…。
 
湖畔のリゾート地シャンペに到着。小さな湖、シャンペ湖を囲む緑の山に静かにたたずむ避暑地。その日の午後は湖の撮影にじっくり取り組んだ。湖の深いエメラルド色を再現したくて、あらゆる角度から撮影を試みた。

夕日に染まるグランド・コンバル山を映し出すシャンペ湖。

 (次回に続く…)

2014年11月27日木曜日

ツール・ド・モンブラン(ヨーロッパ・アルプス)③クールマイヨール~エレナ(イタリア)

 
7月中旬、撮影機材一式背負って、ヨーロッパアルプスのトレイル、”ツール・ド・モンブラン”を歩き始めて一週間になる。アルプスの最高峰・モンブランの周りをぐるりと回るこのコースを歩きながら、アルプスの絶景を撮影する計画で旅立ったのに、初日から悪天候が続き、撮影の機会に恵まれないまま雨の中をひたすら歩いて峠を越えた。フランスからイタリアへ入った辺りから、天気は少しづつ回復を見せ始め、やっと撮影を再開できた。前回の記事で書いたように、イタリア側のモンブランの麓の街・クールマイヨールへ到着。

クールマイヨールで休息の後、次はスイス国境に向けて、再びトレイルを歩き始めた。街を後にし、トレイルは少しづつ勾配を増しながら森の中に続いていく…。いつの間にか文明を後にし、再びアルプスの大自然にすっぽり包まれながら、急になったトレイルを登り続けた。気が付いたらかなり高く登って来ていたようだ。森が開け、クールマイヨールの町が眼下に広がる!

高原に出ると、またしても色鮮やかな山野草の花畑が広がっていた!

さらに登り続けると、氷河を抱くモンブラン山脈と、グランド・ジョラスの険しい岩壁が緑の谷の向こうに、あまりにも見事にそびえていた。待ちに待った太陽と青空の下、目の前にあるものすべてが、輝きを増していた。その日の山小屋に付くまでに、何回立ち止まり、パックを下ろし、撮影を行ったことだろう…。

夕暮れ近く、モンブラン山脈を覆っていた雲が少しづつ薄くなり、ついにモンブランの頂上が姿を現した!シャモニーを出発して以来、ずっと雲の中に隠れていたその姿にイタリア側でやっと再会!イタリア側から見るモンブラン(南壁)はフランス側から見た姿とはまったく別の山のようだった。

翌朝、朝日を浴びて朱色に輝くモンブラン。

こちらはグランド・ジョラス(Grandes Jorasses 、4,208m)。

 グランド・ジョラスと氷河。
 
アルプスに咲く山野草…。

 (次回に続く。)



2014年11月9日日曜日

ツール・ド・モンブラン(ヨーロッパ・アルプス)②エリザベッタ~クールマイヨール(イタリア)

 
今年の7月、アルプスの撮影にヨーロッパへ出かけた。アルプスの最高峰・モンブランを撮影するために、ツール・ド・モンブランという有名なトレイルを、カメラ機材一式背負って、約170キロほど歩いた。このトレイルを、フランス・シャモニーの南、レ・ズーシュの街から出発すること4日目、悪天候の続くなか、フランスからイタリアへの国境を越えた。


4日間降り続いた雨がついに止んだ。雨具なしで山小屋を出て、バル・べニの谷へ向けて山道を下っていく。

日の光が雲の隙間から、山々を照らし出した。谷中に広がる新緑が輝く…。

この谷にはため息の出るような絶景が続いている。トレイル沿いには鮮やかな花畑が広がり、小さな湖はモンブラン山脈の岩肌を鏡のように映し出している。アルプスの美しさを凝縮したようなこの谷は、写真家の夢、一日中撮影を続けても飽きることがないだろう…、ただしもう少し天気が良くて、背景に青空が広がればの話だが…。

トレイルは谷を離れて、急な登りとなった。登りきったところから、谷を見下ろす崖沿いにトレイルが続いている。深い谷の対岸にはモンブラン山脈がそびえ、数々の氷河が岩肌を流れ落ちている。素晴らしい絶景のはずなのだが、灰色の雲が再び空を覆い、今にも雨が降り出しそうな暗さだ…。このツール・ド・モンブランを歩き始めて以来、天気には恵まれていない。撮影の機会を逃し続けている…。

やっぱり雨が降り出した。降り出した、と思ったら一気に土砂降りになった。クールマイヨール(Courmayeur)の町に向けて、急下降するトレイルを、滑りながらひたすら下る…。木々の間から、街が見えてきた。

クールマイヨールは久しぶりの賑やかな街だ。街の中に入ったとたん、まるで中世の時代へ来てしまったかのような、錯覚を覚えた。このドローン(Dolonne)と呼ばれる一角は、石造りの建物に狭い路地、歴史を感じる小さな教会、道のすべてが石畳…という、古くて魅力的な雰囲気を出していた。時間を変えて、何度かこの一角に足を運び、撮影を行った。

特に夕刻の雰囲気が好きだ。

こちらは、クールマイヨールの中心街。観光客の集まるモダンな一角だ。ここはイタリア側モンブラン麓の街、フランス側のシャモニーとは一味違う。

 (ツール・ド・モンブランの撮影記は次回に続きます。)



2014年10月24日金曜日

ツール・ド・モンブラン(ヨーロッパ・アルプス)①Les Houches - Elisabetta, (フランス-イタリア)

 
フランス、アルプスの麓の街・シャモニーで数日間の撮影後、約15キロのパックを背負い、全長170キロを超えるトレイル、ツール・ド・モンブランを歩き始めた。ヨーロッパ・アルプスの最高峰、モンブラン山脈の周りをぐるりと一周する。フランス、イタリア、そしてスイスの国境を越えるこのハイキングコースは、特に人気が高く、夏の間に世界各地からたくさんのハイカーが訪れる。一周するのだから、どこから始めてもいいのだが、ガイドブックなどで紹介されている、シャモニーの南・レ・ズーシュからの出発を選んだ。

レ・ズーシュを出発した第一日は前日から降り続く土砂降りの雨。泥と水溜りの急な登りがしばらく続き、やっとのことで、高原地帯に入った。急流に架かるつり橋を渡り、本来なら氷河と岩山、そして山野草が咲き乱れる風光明媚なこの場所は、雨と霧で視界が悪く、期待していた写真が全く取れなかった。降り続く雨がトレイルを流れ、滑りやすくなっていた。撮影機材の重さが、肩から背中、腰にかかる…。とにかく、その日の宿にたどり着くことが目的で、ひたすら歩いた。

このツール・ド・モンブランのトレイル沿いには、数多くの山小屋が点在している。活動拠点のアラスカはもちろん、アメリカ各地の国立公園でのトレイルは、基本的にテントを担いで自炊が当たり前だから、相部屋とはいえベッドが用意されていて、フルコースのディナーに簡単な朝食が出て、施設によっては熱いシャワーを浴びることができるなんて、なんて贅沢なんだろう。しかも宿泊費は想像以上に割安だ。中には好んでキャンプをしている人たちにも出会ったけど、ほとんどのハイカーたちは小さめのパックで山小屋に泊まりながら、10日以上にもわたるハイキングを楽しんでいた。ところが、カメラ機材一式と三脚を含むパックは、約15キロ、さすがに重い…。

このツール・ド・モンブランのトレイルのあるアルプス一帯には、チーズの原料となる牧牛が盛んで、丘という丘は草をはむ牛たちで埋め尽くされていた。牛たちは、ハイカーには目もくれず、ひたすら黙々と食べ続ける…。牛一頭一頭につけられたベルが一帯に鳴り響き、この旅のバッグミュージックとして耳に残っている。トレイルはContamines-Montjoie自然保護区に入った。2日目も一日中雨だった。

前日の雨が夜の間に雪に変わり、野草の咲く緑の峠はすっかり雪の下に隠れてしまった。7月中旬だというのに、このアルプスで雪の中を歩く羽目になってしまうなんて…。本来なら、絶景の山岳地帯になるはずの、ボンノム峠(Col du Bonhomme)は、霧雨と雪で視界がほとんどなく、雪に隠れた急なトレイルを滑りながらひたすら登るという、意外な展開になった。この峠での撮影を楽しみにしていただけに、本当に残念でならなかった。この日はとうとうカメラを取り出すこともなかった…。

4日目、雨は小降りになったものの、まだまだ曇り空の下、フランスからイタリアへの国境を超えた。国境はセーニュ峠(Col de la Seigne)にまたがり、国境を示す小さな石碑が立っているだけで、入国審査どころか無人だった。本来ならこの峠からモンブランが再び姿を現すはずらしいのだが、霧と強風で視界が悪く、何も見えなかった。
緩やかな峠がイタリア側に下っていく。灰色の雲が次第に薄くなり、雄大な山々が垣間見え始めた。雲の間から、うっすらと日が差すと、辺りは魔法に包まれたように、緑の草原が色好き、野草が明るい色に点された。やっと撮影ができる!

色とりどりに咲き乱れる野草の中から、アラスカでおなじみのワタスゲ(Cotton Grass)と勿忘草(Forget-me-Not)を見つけた。遠く離れた大陸の、全く別の国に同じ花が咲いていた。

こちらは、アルプス特有のBlue Gentians。

 アルプス山中に数多く残る遺跡の一つ…。

まだ日が出ているうちに、2つの氷河の近くへ登った。(Lex Blanche氷河とEstellette 氷河) アルプスでは、驚くほどの速さで氷河が後退している。十年位前までは雄大に流れていた氷河も、現在ではほんの少し山肌に残っているという程度で、正直がっかりする眺めになってしまった…。

この続きは、次回のブログにアップします。ご期待を!
 

2014年10月5日日曜日

ヨーロッパ最高峰・モンブラン

 
ヨーロッパ・アルプスの最高峰、「白い山」を意味するモン・ブラン(Mont Blanc 4,810.9m)はフランス、イタリア、スイスをまたがる国境に位置する。青い空の下、氷河を抱く白いモン・ブランの頂上は、ため息の出るような絶景だ。おなじみのケーキ、モン・ブランはフランス側から見えるこの山をモデルに作られたのだ。

この度、モン・ブランを中心としたアルプスの自然を撮影するために、初のヨーロッパへ向かった。カメラ機材一式を背負って、モン・ブラン周辺を一周するトレイル、ツール・ド・モンブラン(Tour du Mont Blanc)を歩く。全行程約160キロ、約2週間かけて、峠を越え、山野草の咲く高原を歩き、放牧地を横切り、フランスからイタリア、そしてスイスを通過し、フランスへ戻ってきた。

モン・ブランの周りをぐるりと一周しながら、様々な角度からこの山を撮影してきたが、やはりフランス側からの眺め、白く丸みを帯びたモン・ブランの姿が一番だ。雨が止み、雲が晴れ、シャモニーの街を見下ろすように現われた白い山は感動的だった。

モン・ブランぐらいの高峰になると、雲を引き寄せ、山岳特有の天気を作り出してしまう。アラスカのマッキンリー同様、雲の中に姿を隠してしまうことが多いのだ。モン・ブランの撮影には運と忍耐が必要だ。
 
ありがたいことに、モン・ブラン周辺には便利な交通機関が整っており、トラムやケーブルカーを利用すれば、撮影に最適な絶景地点までほんの数分で行くことができる。

モン・ブランの頂上を間近に撮影するために、エギーユ・デュ・ミディ(Aiguille du Midi)の展望台へ向かった。標高3,842mのエギーユ・デュ・ミディの頂上にある展望台にも、ケーブルカーとエレベーターで簡単に着いてしまう。展望台に着いた時には、霧で視界は真っ白。冷たい風の吹く中、待つことしばらく…。霧の向こうにモン・ブランの巨峰が少しづつ見え隠れし始めた。じらされているみたいだ。見えては隠れ、をしばらく繰り返したあと、霧のベールが完全にはがされて、白いモン・ブランが青空を背景に姿を現した。太陽の光を浴びて白く輝くモン・ブランに手が届きそうだ。この期を逃さず、と撮影を続ける…。その後しばらく、モン・ブランは隠れることなく撮影を許してくれた。

こちらはイタリア側から見たモン・ブラン。イタリア語では、モンテ・ビアンコ(Monte Bianco)。どちらも白い山という意味だ。フランス側で見た山とはぜんぜん姿が違う。数日間降り続いた雨が止み、やっと姿を現した。朝日を浴びて赤く輝くモン・ブランの撮影に成功。

こちらも、イタリア側。アルプスの山中にはたくさんの遺跡が存在する。

フランス側。ブレヴァン山頂(標高2,525m)から、モン・ブランが真正面に見える。降り続いた雨が止み、アルプス滞在の最終日に、やっと姿を現してくれた。

次回もアルプスからの写真を初回予定。ぜひ、見てくださいね。