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2016年7月23日土曜日

アラスカ、キナイ山脈と夕日


 5月下旬のアラスカはすでに白夜の季節、夜の10時を過ぎたというのにまだ明るかった。キナイ半島に向けてスワード・ハイウェイを南下していると、長い日照時間にようやく終わりが来て、陽が傾き始めた。すでに11時を過ぎている。太陽は時間をかけてゆっくりと西のかなた、海の向こうに沈もうとしていた。

 辺りが桃色の光に包まれて、白いキナイ山脈に最後の光を照らし出した。急いで場所を選んで、カメラをセットする。白夜の日没の空の色はため息が出るほど美しい。

 反対側の空はまさに沈みゆく夕日の輝きで、明るいオレンジ色に染まっていた。

夕暮れの空の色が時間をかけて薄れ、闇が辺りを覆いはじめた。暗闇の訪れと同時に、入り江に潮がゆっくりと戻ってくる音だけが響いていた。





2015年12月4日金曜日

失われた湖 ‐ アラスカ州キナイ半島、ロスト・レイク


 アラスカ最大の都市、アンカレッジから車で20分も走ると、辺りはすでにアラスカ原野の風景に変わる…。特にアンカレッジを取り囲むチュガッチ山脈には、険しい岩山から湿原、無数の湖と渓谷、変化にとんだ絶景が続いている。ここ2、3年ほどチュガッチに散らばるトレイルを丹念に歩き、季節を変えて撮影を続けてきた。特に、今年2015年の夏は天候にも恵まれて、雪解けも早かった。アンカレッジから南のキナイ半島の風景は特に美しく、何度訪れても息を飲むほどの絶景に出会う。

6月中旬、キナイ半島北部のチュガッチ国有林へカメラ機材を背負ってキャンプに出かけた。この時期のキナイ半島は緑に覆われ、色鮮やかな野草とともに白夜の夏の訪れを祝っているかのようだった。トレイルを登っていくと、森が開けて高原に出る。標高が高くなるにつれて、季節が夏から初春へと逆戻り、目的地、ロスト・レイクの周りにはまだ雪が残っていた。想像以上に大きいロスト・レイクはまだ大部分に氷が残っていた。湖面に浮かぶ氷の表面が日差しを浴びて輝いていた。湖畔にキャンプを設置して、撮影を始める…。陽がゆっくりと傾き、対岸のリザレクション・ピークスを照らし、辺り一面をオレンジ色に染めていく…。北緯度の高いアラスカでは、特にこの時期、日没の時間がとても長い。夕焼けの風景を撮影するのには、大変ありがたい。

 残念なことに、これからまさに赤く染まるはずの夕日が、対岸にそびえる峰の向こうに隠れてしまった。というわけで、撮影に適した場所を求めて、湖の周りを歩く。こちらは、少し高めの場所から湖を見下ろす丘にて撮影。陽が沈んだ後も、黄昏の時間が2時間ほど続いた。

 翌日も快晴。青空の下、峰と湖が白く輝く。

 こちらは、ロスト・レイクの別の場所で撮影した夕焼け。ロスト・レイクの風景が大変気に入ったので、数週間後に再び訪れた。ロスト・レイクは大きいだけではなく、形も入り組んでいるから、場所が変わると景色も全く変わって見える。数週間の違いが、季節の違い。この時期は日照時間が20時間以上もあるから、太陽の光を浴びて植物はあっという間に成長する。湖は完全に溶けて、湖畔は新緑と野草に覆われていた。

 陽が沈み、曇り空が薄暗くなり始めたころ、空が鮮やかなピンク色の光に包まれた。日没が終わり、撮影機材をたたんでキャンプに戻った後だ。淡い桃色の光が強さを増し、雲を見事なピンクに染め上げた。まるで魔法に包まれたかのような出来事だった。急いでカメラを設置し、キャンプ近くの湖畔で撮影を再開、第二の夕焼けは短かったけど、劇的だった。

 湖の近くに住むマーモット。

 キナイ半島は特に野草の花畑が見事だ。6月中旬、ロスト・レイクの周辺はまだ野草の季節の準備中、ルピナスもまだ新芽とつぼみだった…。

自然の芸術!

数週間後にはルピナスの花畑が広がっていた。         

アラスカは短い夏の間に最も美しく輝く。ただ夏は本当に短い。これを書いている12月現在は、真冬で陽が短く、朝10時過ぎまで真っ暗、夕方4時前には陽が沈んでしまう。しかも連日の曇り空で、灰色の日がすでに2,3週間続いている。この真冬のアラスカを抜け出し、来週から2週間ほどハワイ、カウアイ島へ撮影に出かける。自然の美しいカウアイ島、ナパリ・コーストが今回のハイライトだ。次回のブログは…3週間後に更新予定。気長にお待ちください。



2014年6月18日水曜日

アラスカ、キナイ山脈の鏡




今年は春の訪れが早かった。普通なら、やっと雪が解けたけど、まだまだ寒さの続くはずの5月上旬に、すでにアンカレッジ周辺は新緑に覆われていた。

1ヶ以上も早い新緑の季節、そして6月には気温もグングン上昇し、日照時間も延びてすでにアラスカは夏の真っ盛り。一日20時間以上の太陽の下、植物は瞬く間に成長し、原野には早くも野草が次々と花を咲かせている。アラスカで最も美しい季節の訪れが予定以上に早く来てしまったから、撮影をする側も忙しい日々を過ごしている。

キナイ半島に位置する大きな氷河湖、キナイ・レイクはサーモン釣りで有名なキナイ川の源流となる湖として知られているが、晴れた日の湖は息を飲むような絶景なのだ。深いエメラルド色の水面が波ひとつなく穏やかに広がり、対岸のキナイ山脈を湖面に鏡のように映し出す…。

自然写真を始めた頃から、水面に映る風景にはいつも特別な魅力を感じていた。

早朝、前日まで降り続いていた雨が止み、青空が顔を出し始めていた。風は全くなく、湖面は波ひとつない…、静かだ。日の出間もない太陽が、雲の間から対岸の山脈を照らし始めた。雲の隙間から射す細い光は山の頂上から下へと、ゆっくりと移動していった。滑らかな湖面は、山を照らす光の模様をしっかりと映し出している…。誰もいない湖畔で、時の経つのも忘れ、原野の見せてくれる美しい瞬間を見つめていた…。

こちらはキナイ半島北部の湿原に写る氷河と山脈。

2013年9月29日日曜日

アラスカ・ポーテージ氷河

 
アラスカ中に万単位で存在するの氷河の中で、最も観光客が訪れるといわれるポーテージ氷河はアンカレッジの南東、チュガチ国有林のハイウェイ沿いに位置する。このポーテージ氷河は十数年前まではハイウェイ沿いに建てられたビジターセンターの展望台から見ることができたのだが、温暖化の影響で急速に後退が進み、1世紀の間に5キロも退いてしまったそうだ。
 
ポーテージ氷河を間近で撮影するために、峠を越え、山道を歩き、現在の氷河の真正面でキャンプをした。
 
氷河湖の周りには、ヤナギランの鮮やかなピンクの花が短い夏を謳歌するかのように見事に咲き乱れていた。この辺りでは珍しい快晴の下、氷河は蒼く輝いていた。
 
轟音と共に、新しい氷山が生まれる…。

夜10時過ぎの遅い夕日は、ゆっくりと時間をかけて沈む。暖かいオレンジ色の光が氷山を金色に輝かせる…。北の大地では夕暮れの時間が驚くほど長いから、角度を変えていろいろな撮影ができるのは、実にありがたい。
 
氷河の前で、キャンプファイヤー。
 
翌朝も、運良く晴れていた。太陽がゆっくりと地平線から顔を出すと、桃色の光が氷河の上の山頂を照らし出した。光は少しづつ赤みを増して、ゆっくりと氷河を照らし始めた。朝日を浴びて、氷河が黄金色に輝く瞬間は夢を見てるように美しかった。自然が見せてくれる神秘的な瞬間を目撃し、撮影できた喜びを胸に、再び山道を歩き、峠を越えて帰る…。