2016年7月23日土曜日
アラスカ、キナイ山脈と夕日
5月下旬のアラスカはすでに白夜の季節、夜の10時を過ぎたというのにまだ明るかった。キナイ半島に向けてスワード・ハイウェイを南下していると、長い日照時間にようやく終わりが来て、陽が傾き始めた。すでに11時を過ぎている。太陽は時間をかけてゆっくりと西のかなた、海の向こうに沈もうとしていた。
辺りが桃色の光に包まれて、白いキナイ山脈に最後の光を照らし出した。急いで場所を選んで、カメラをセットする。白夜の日没の空の色はため息が出るほど美しい。
反対側の空はまさに沈みゆく夕日の輝きで、明るいオレンジ色に染まっていた。
夕暮れの空の色が時間をかけて薄れ、闇が辺りを覆いはじめた。暗闇の訪れと同時に、入り江に潮がゆっくりと戻ってくる音だけが響いていた。
2016年3月14日月曜日
ナ・パリ・コースト トレッキング ‐ ハワイ・カウアイ島
カウアイ島北部のナ・パリー・コーストは太平洋で最も美しい場所と言われている。「ジュラシック・パーク」にも登場した緑の断崖絶壁が続く海岸線には世界中から観光客が訪れている。観光客のほとんどは実際に海岸に足を踏み入れることがなく、ツアーに参加して、ボートから海岸線を観光するか、ヘリコプターから見降ろすだけで終わり。このナ・パリ・コーストを実際に体験するには、海岸沿いに削られたカララウ・トレイルを片道11マイル(17.7㎞)トレッキングして、楽園と言われるカララウ・ビーチでキャンプをするに限るのだ。もちろん、夕日に染まる海岸線を撮影するためには、キャンプは欠かせない。
ハワイ諸島が雨季にあたる12月初旬、真冬のアラスカを発ち、カウアイ島へ。アラスカに移り住んでから、冬のハワイ撮影プロジェクトは恒例となりつつある。幸いカウアイに着いてから天気のは恵まれている。朝から快晴の下、最初の2マイル(3キロほど)ハナカピアイ・ビーチまではトレイルも広く歩きやすかった。エメラルド色の海を見下ろしながら、さっそうと歩く…。ここまでは日帰りの観光客も多く、カジュアルな服装にデイパックのみという家族連れが目立つ。
ハナカピアイ・ビーチを過ぎたあたりから、雲行きが怪しくなり、霧雨が降り出した。トレイルは雨で泥だらけ、滑りやすくなっていた。カウアイ島の山岳部の降雨量は世界一ともいわれ、冬の間緑の頂上に居座る雲から毎日のように雨が降り続いている。17.7㎞の間に5つの谷をまたがるカララウ・トレイルは、登ったと思ったらすぐに下り、そしてまた登りを繰り返す。特に雨天の続く冬場は、トレイルが泥だらけで、重いパックを背負い滑りながら、バランスを取りながらひたすら歩くのだ。6マイル地点にあるハナコアのキャンプに着くころには、すでに暗くなりはじめていた。雨は土砂降りに変わり、一晩中降り続けた。
翌朝もまだ雨が降っていた。ハナコア川も水かさを増して、カメラ機材とキャンプ用品のつまった大きなパックを背負って超えるのは苦難の業だった。川の真ん中で滑って転び、全身びしょぬれになるハイカーもいた。腰まで水につかりながら、パックを濡らさないように一歩一歩気を付けて歩いた。途中、寄り道をして、ハナコア滝を撮影。緑の岸壁から流れ落ちる滝は圧巻だった。
天気は刻々と変わっていく…。雨が降り、太陽が顔を出し、虹が架かる…。ハワイの風景画によく虹が登場するのには納得だ。
このカララウ・トレイルで最も危険と言われている〝Crawler's Ledge〟(直訳すると,はって歩く岩棚という意味になる)が見えてきた。アメリカのアウトドア誌で「全米で最も危険なトレイル」と位置付けられ、ハイカーたちの間でも語り継がれてきた、あの崖っぷちの岩棚がついに眼前に現れたのだ。雨に濡れた赤土のトレイルが急降下してうねりながら、岸壁に続いていた。バックパックのベルトをを再調節していると、2人のハイカーが下から登ってくるのが見えた。一人は濡れたトレイルを滑りながら苦戦していた。昨夜からの雨でトレイルの状態は悪く、泥だらけの急な下りすでに苦戦気味。トレイルが赤土から、火山岩の黒い岩に変わり、徐々に細くなっていった。数200メートル下の断崖には、荒い波が次々と岸壁を打っている。雨上がりの岩肌は濡れて滑りやすくなっている。細くなったトレイルが岸壁を回り込むところまで行ったものの、足がすくみ、重いパックを背負いながらバランスをとるのに神経をすり減らしていると、救いの神が現れた…。二人のハイカーが後ろからやってきたのだが、そのうち一人はプロのハイキングガイドでこのカララウ・トレイルを何度もガイドしているという。もう一人の女性は、ガイドを雇ったドイツ人のお客さん。親切なガイドの手助けで、無事岩棚を突破できた。岸壁を回ったところで、陽が差し始めて、周りの風景を魔法がかかったように、鮮やかな天然色に変えていった。
ところが、岸壁の岩棚よりも大変なスポットがさらに先に待っていた。再び赤土の丘が続いていたのだが、崖っぷちに刻まれたトレイルは連日の雨で滑りやすく、一歩一歩慎重に歩いていかなくてはならない。しかも侵食し細くなった場所が数か所もあった。その細くて泥だらけの部分に大きな岩が飛び出していた。その岩を回り込むためには岩に抱き付き片足ずつ慎重に超えていくしかない。パックの重量が岩につかまる体を下に引っ張る…。はるか下には荒くれた海。もしも足を滑らしたら、この赤い壁を一気に滑り落ち、波打つ海にまっしぐらだ。赤土の壁からチェーンのように突き出している木の根をつかんで岩を回り込んだ。果たして、こんな木の根に自分の命を預けていいものかと思ったが、何とか危機を逃れ、無事通過できた。
長い長い10マイル(16㎞)のトレッキングを経て、ついにカララウ渓谷の絶景が眼下に現れた。三方を切り立った緑の岩山に囲まれて、赤土の丘が海岸に向かって下っていく…。緑のじゅうたんが谷を埋め尽くし、瑠璃色の海が白い波を打ち寄せる…。太陽の光が降り注ぎ、そこはまさに楽園の光景だった。
今まで歩いてきたトレイルを振り返る…。
丘を下り、緑の生い茂る谷を横切って、ついにカララウ・ビーチへ到着!あまりの美しさに、パックを降ろしてしばし撮影に取りかかった。この地点から、約1.5㎞のビーチが続く。長いトレイルの終点にようやくたどり着いた。
キャンプを設置を終えると、すでに陽が傾き始めていた。赤道近くの日没はあっという間だから、撮影の準備を始める。暖かい光が、岩山を染めていく…。
冬の間、カウアイ北部の海岸にはビッグウェーブが頻繁に押し寄せる。海岸線に打ち付ける大波を夕日をバックに撮影できるポイントを選んで、セッティング。この季節の日没は南西になるから、太陽は崖の向こうに沈むことになる。ここまで背負ってきた三脚の活躍の場だ。濡れた砂の上に、機材の重さで沈む三脚を安定させるのも至難の業だ。慎重に構図を決めて、岸壁に大波の押し寄せるのを待っていると、こちらにも波がやってくる…。機材が濡れないように、三脚にカメラを乗せたまま走る…。波が引くとまた場所を選んでセッティング、こちらに波がやってくるまでに数枚撮影、そしてまた退却…、の繰り返しで何とか数枚気に入ったものが取れた。
夕日が断崖の向こうに隠れ、まさに沈む直前に空をオレンジ色に染め上げた。そして、ゆっくりと紺色に変わっていった。日没直後、辺りは淡い紫色の光に包まれていった…。闇が広がると、空一面に星が散らばり、静かなビーチに押し寄せる波の音だけが響いていた。
翌日、カララウ渓谷の奥深くに入り、ジャングルの中に隠れ住むヒッピーたちの村を探しに出かけた。カララウ渓谷の写真は次回のブログに掲載予定。次回のブログは、今度こそ2週間以内にアップするので、是非ともよろしく。
ハワイ諸島が雨季にあたる12月初旬、真冬のアラスカを発ち、カウアイ島へ。アラスカに移り住んでから、冬のハワイ撮影プロジェクトは恒例となりつつある。幸いカウアイに着いてから天気のは恵まれている。朝から快晴の下、最初の2マイル(3キロほど)ハナカピアイ・ビーチまではトレイルも広く歩きやすかった。エメラルド色の海を見下ろしながら、さっそうと歩く…。ここまでは日帰りの観光客も多く、カジュアルな服装にデイパックのみという家族連れが目立つ。
ハナカピアイ・ビーチを過ぎたあたりから、雲行きが怪しくなり、霧雨が降り出した。トレイルは雨で泥だらけ、滑りやすくなっていた。カウアイ島の山岳部の降雨量は世界一ともいわれ、冬の間緑の頂上に居座る雲から毎日のように雨が降り続いている。17.7㎞の間に5つの谷をまたがるカララウ・トレイルは、登ったと思ったらすぐに下り、そしてまた登りを繰り返す。特に雨天の続く冬場は、トレイルが泥だらけで、重いパックを背負い滑りながら、バランスを取りながらひたすら歩くのだ。6マイル地点にあるハナコアのキャンプに着くころには、すでに暗くなりはじめていた。雨は土砂降りに変わり、一晩中降り続けた。
翌朝もまだ雨が降っていた。ハナコア川も水かさを増して、カメラ機材とキャンプ用品のつまった大きなパックを背負って超えるのは苦難の業だった。川の真ん中で滑って転び、全身びしょぬれになるハイカーもいた。腰まで水につかりながら、パックを濡らさないように一歩一歩気を付けて歩いた。途中、寄り道をして、ハナコア滝を撮影。緑の岸壁から流れ落ちる滝は圧巻だった。
天気は刻々と変わっていく…。雨が降り、太陽が顔を出し、虹が架かる…。ハワイの風景画によく虹が登場するのには納得だ。
このカララウ・トレイルで最も危険と言われている〝Crawler's Ledge〟(直訳すると,はって歩く岩棚という意味になる)が見えてきた。アメリカのアウトドア誌で「全米で最も危険なトレイル」と位置付けられ、ハイカーたちの間でも語り継がれてきた、あの崖っぷちの岩棚がついに眼前に現れたのだ。雨に濡れた赤土のトレイルが急降下してうねりながら、岸壁に続いていた。バックパックのベルトをを再調節していると、2人のハイカーが下から登ってくるのが見えた。一人は濡れたトレイルを滑りながら苦戦していた。昨夜からの雨でトレイルの状態は悪く、泥だらけの急な下りすでに苦戦気味。トレイルが赤土から、火山岩の黒い岩に変わり、徐々に細くなっていった。数200メートル下の断崖には、荒い波が次々と岸壁を打っている。雨上がりの岩肌は濡れて滑りやすくなっている。細くなったトレイルが岸壁を回り込むところまで行ったものの、足がすくみ、重いパックを背負いながらバランスをとるのに神経をすり減らしていると、救いの神が現れた…。二人のハイカーが後ろからやってきたのだが、そのうち一人はプロのハイキングガイドでこのカララウ・トレイルを何度もガイドしているという。もう一人の女性は、ガイドを雇ったドイツ人のお客さん。親切なガイドの手助けで、無事岩棚を突破できた。岸壁を回ったところで、陽が差し始めて、周りの風景を魔法がかかったように、鮮やかな天然色に変えていった。
ところが、岸壁の岩棚よりも大変なスポットがさらに先に待っていた。再び赤土の丘が続いていたのだが、崖っぷちに刻まれたトレイルは連日の雨で滑りやすく、一歩一歩慎重に歩いていかなくてはならない。しかも侵食し細くなった場所が数か所もあった。その細くて泥だらけの部分に大きな岩が飛び出していた。その岩を回り込むためには岩に抱き付き片足ずつ慎重に超えていくしかない。パックの重量が岩につかまる体を下に引っ張る…。はるか下には荒くれた海。もしも足を滑らしたら、この赤い壁を一気に滑り落ち、波打つ海にまっしぐらだ。赤土の壁からチェーンのように突き出している木の根をつかんで岩を回り込んだ。果たして、こんな木の根に自分の命を預けていいものかと思ったが、何とか危機を逃れ、無事通過できた。
長い長い10マイル(16㎞)のトレッキングを経て、ついにカララウ渓谷の絶景が眼下に現れた。三方を切り立った緑の岩山に囲まれて、赤土の丘が海岸に向かって下っていく…。緑のじゅうたんが谷を埋め尽くし、瑠璃色の海が白い波を打ち寄せる…。太陽の光が降り注ぎ、そこはまさに楽園の光景だった。
今まで歩いてきたトレイルを振り返る…。
丘を下り、緑の生い茂る谷を横切って、ついにカララウ・ビーチへ到着!あまりの美しさに、パックを降ろしてしばし撮影に取りかかった。この地点から、約1.5㎞のビーチが続く。長いトレイルの終点にようやくたどり着いた。
キャンプを設置を終えると、すでに陽が傾き始めていた。赤道近くの日没はあっという間だから、撮影の準備を始める。暖かい光が、岩山を染めていく…。
冬の間、カウアイ北部の海岸にはビッグウェーブが頻繁に押し寄せる。海岸線に打ち付ける大波を夕日をバックに撮影できるポイントを選んで、セッティング。この季節の日没は南西になるから、太陽は崖の向こうに沈むことになる。ここまで背負ってきた三脚の活躍の場だ。濡れた砂の上に、機材の重さで沈む三脚を安定させるのも至難の業だ。慎重に構図を決めて、岸壁に大波の押し寄せるのを待っていると、こちらにも波がやってくる…。機材が濡れないように、三脚にカメラを乗せたまま走る…。波が引くとまた場所を選んでセッティング、こちらに波がやってくるまでに数枚撮影、そしてまた退却…、の繰り返しで何とか数枚気に入ったものが取れた。
夕日が断崖の向こうに隠れ、まさに沈む直前に空をオレンジ色に染め上げた。そして、ゆっくりと紺色に変わっていった。日没直後、辺りは淡い紫色の光に包まれていった…。闇が広がると、空一面に星が散らばり、静かなビーチに押し寄せる波の音だけが響いていた。
翌日、カララウ渓谷の奥深くに入り、ジャングルの中に隠れ住むヒッピーたちの村を探しに出かけた。カララウ渓谷の写真は次回のブログに掲載予定。次回のブログは、今度こそ2週間以内にアップするので、是非ともよろしく。
2015年9月16日水曜日
エクルートナ・レイクにての夕焼け
チュガッチ山脈に横たわる氷河湖、エクルートナ・レイクはアンカレッジから近いということもあり、お気に入りの場所に一つだ。陽の光を浴びて瑠璃色に輝く湖の風景は、いつ見ても感動的だ。度々訪れ、湖畔の様々な場所から撮影してきた。
ある夏の日の夜、夕日の撮影のために湖一望に見下ろす丘の上まで、トレイルを歩いた。7月初旬のアラスカの日は長く、日没は夜11時過ぎ。森の中をうねるように続く山道を登っていくころには、すでに薄暗くなり始めていた。近くの木々の中から、ガサガサ音がしたと思ったら、なんとブラック・ベア(アメリカ・クロクマ)が近くの藪の中を歩いていた!植物が密生していて、姿はほとんど見えなかったけど、歩き回る音だけは静かな森の中に響いていた。
森が開けて、エクルートナ・レイクが眼下に見えてきた。太陽はすでに傾き、日没間際の暖かい光が山肌を照らし出していた。雲の間から、朱色の光のリボンが対岸の峰を染める…。穏やかな湖面には、夕日に照らされたチュガッチの山々がくっきりと映っている。深夜の奇跡的に美しいい光景が目の前に広がっている。まさに撮りたかった瞬間だ。ある夏の日の夜、夕日の撮影のために湖一望に見下ろす丘の上まで、トレイルを歩いた。7月初旬のアラスカの日は長く、日没は夜11時過ぎ。森の中をうねるように続く山道を登っていくころには、すでに薄暗くなり始めていた。近くの木々の中から、ガサガサ音がしたと思ったら、なんとブラック・ベア(アメリカ・クロクマ)が近くの藪の中を歩いていた!植物が密生していて、姿はほとんど見えなかったけど、歩き回る音だけは静かな森の中に響いていた。
アラスカでお馴染みの野草、ファイヤ・ウィード(和名・ヤナギラン)がすでに鮮やかなピンクの花を咲かせていた。このピンクの野草の先の部分が咲くころには、アラスカの短い夏は終わりに近づいている…、と言い伝えられている。まだ下の部分が咲き始めたところだけれど、まだ7月の初めだというのに夏の終わりを感じるなんて、寂しい気分になる。アラスカの夏は、本当にあっという間なのだ。
この日の日没は、意外にも短く感じた。緯度の高いアラスカでは日没の時間が本当に長く、時間をかけてスポットを選びながら撮影できるのだが、黄金色の光は雲の中で徐々に弱くなってしまった。
さて、これを書いている9月半ばはすでに秋も終わりに近づいている…。すでにオーロラが空を舞い始める季節になった…。次回は夏の終わりに現れた見事なオーロラの写真を紹介したいと思う。
2013年9月29日日曜日
アラスカ・ポーテージ氷河
アラスカ中に万単位で存在するの氷河の中で、最も観光客が訪れるといわれるポーテージ氷河はアンカレッジの南東、チュガチ国有林のハイウェイ沿いに位置する。このポーテージ氷河は十数年前まではハイウェイ沿いに建てられたビジターセンターの展望台から見ることができたのだが、温暖化の影響で急速に後退が進み、1世紀の間に5キロも退いてしまったそうだ。
ポーテージ氷河を間近で撮影するために、峠を越え、山道を歩き、現在の氷河の真正面でキャンプをした。
氷河湖の周りには、ヤナギランの鮮やかなピンクの花が短い夏を謳歌するかのように見事に咲き乱れていた。この辺りでは珍しい快晴の下、氷河は蒼く輝いていた。
夜10時過ぎの遅い夕日は、ゆっくりと時間をかけて沈む。暖かいオレンジ色の光が氷山を金色に輝かせる…。北の大地では夕暮れの時間が驚くほど長いから、角度を変えていろいろな撮影ができるのは、実にありがたい。
氷河の前で、キャンプファイヤー。
翌朝も、運良く晴れていた。太陽がゆっくりと地平線から顔を出すと、桃色の光が氷河の上の山頂を照らし出した。光は少しづつ赤みを増して、ゆっくりと氷河を照らし始めた。朝日を浴びて、氷河が黄金色に輝く瞬間は夢を見てるように美しかった。自然が見せてくれる神秘的な瞬間を目撃し、撮影できた喜びを胸に、再び山道を歩き、峠を越えて帰る…。
2013年5月26日日曜日
アラスカ、チュガッチ山脈
長い冬がようやく終わって、アンカレッジ周辺にもやっと春がやってきた。日照時間が日に日に延びて、5月中旬の今はすでに白夜の始まり、夜の11時過ぎまで明るい。太平洋岸沿いのアンカレッジ周辺はほとんど雪が消え、少しづつ新芽が出始めているものの、周辺の原野では今まさに雪解けの真っ最中。まもなくアウトドアを楽しめる季節がやっくる。
カナダ国境からアラスカ西部の海岸地帯に320kmほど広がるチュガッチ山脈は、アンカレッジの丘陵地から20分ほどでアクセスできる。険しい山岳地帯から湖、氷河、サケの上ってくる大河、数多くの野生動物が生息する変化にとんだ原野は、自然愛好家には大人気、もちろん自然写真家にとっても限りない可能性を与えてくれる場所だ。
雪解けが始まった自然の中で、ふっと見かけた芸術作品。まるでガラス細工のような見事な模様の刻まれた氷の下を、雪解け水が流れる…。
凍った滝に降りかかった粉雪。
チュガッチ州立公園の中でも絶景のエクルートナ湖。5月半ばになってやっと少しづつ解け始めた。
2013年2月8日金曜日
夕日に染まるマッキンリー山
マウント・マッキンリー(現地語でデナリ)を撮影するために、白夜の続く7月に、デナリ国立公園へキャンプに出かけた。北米最高峰のマッキンリー山のあるデナリ国立公園はアンカレッジからは車で約5時間、ビジターセンターからはシャトルバスに乗って、園内のキャンプ場へ向かう。
昨晩の星空がいつの間にか曇り空に変わり、シャトルに揺られて園内の一本道を進むころには、小雨が降り始めてきた。短い夏の間、北米最高峰の峰は毎日のように雲の中に隠れてしまう…。標高6,194 mのマッキンリーは、そのあまりの高さから独自の天候を創り出す。ほんの数時間のうちに、雲を創り出し、姿を被ってしまうのだ。短い夏の観光シーズンに毎日数千人の観光客が訪れるのだが、そのほとんどがマッキンリーの姿を見ることもなく去っていく。
デナリ国立公園唯一の道をシャトルに揺られ数時間、マイル85地点にあるワンダー・レイクキャンプ場にたどり着いた。このキャンプ場の真正面にはマッキンリーがそびえているはずなのだが、目の前に広がるのは灰色の雲の一幕だけ。ここまで曇っていると、この日はマッキンリーの姿を拝めることはないだろうと、すっかりあきらめ気分になった。マッキンリー・バー・トレイルを数時間歩き、キャンプ場に戻ってくる。

雲が動き出して、2時間ほどで、マッキンリー山はその全貌を現した。空全体が次第に晴れ渡り、マッキンリーの向かい側からは太陽も顔を出した。すでに太陽は地平線近くまで傾き、日没間近の暖かい光がマッキンリーの氷河を照らし出した。
北極圏に近いここアラスカでは、太陽はゆっくりと時間をかけて地平線に沈む。日が低くなるにつれて、マッキンリー山は黄金色に染まり、ゆっくりと時間をかけてオレンジ色から朱色へと移り変わっていく…。
最後に頂上が桃色に輝き、ゆっくりと色あせていった。
自然は時には魔法のような瞬間を見せてくれる。
自然は時には魔法のような瞬間を見せてくれる。
2011年10月21日金曜日
アンカレッジから見えたマッキンリー
10月初旬、アンカレッジ周辺は見事な秋晴れが続いた。私の住むアラスカ内陸部、フェアバンクス郊外ではすでに紅葉は終わっていて、冬の気配が色濃くなっているものの、500キロほど南に位置するアンカレッジではまだ秋だった。海に面するアンカレッジからは、クック湾をはさんで、対岸のキナイ半島に連なる山々が一望に見渡せる。秋の訪れとともに、山の頂上には雪が積もり始め、やがて秋が終わりに近づくにつれて、雪が徐々に下へと降りてくるのだ。そして山全体が雪に覆われる頃には冬がやってくる。
クック湾を望む高台で夕焼けを待つ…。フェアバンクスよりもかなり暖かいのには驚きだが、ありがたい。
黄金色に輝く太陽は、ゆっくりと山の峰に近づき、空を明るいオレンジ色に染めて、その輝きをクック湾の表面に映しだしていた。目の前に広がる見事な光景に心を奪われていたのだが、ふっと別の方向を見ると、はるか遠くにどことなく特徴のある険しい雪山が目に入った。北西にそびえるその白い峰こそは、北米の最高峰、マウント・マッキンリー(デナリ)だったのだ。晴天で空気が澄んでいれば、400キロ以上離れたアンカレッジからもその姿が望めるということには驚きだった。淡い夕日の光がマッキンリーを朱色に照らし出した。北の大地の夕焼けは長く、本土ではわずか数分で消えてしまう淡い光がしばらく続くのだ…。やがて朱色の光は時間をかけて少しづつ薄れて、空全体が淡いピンクに染まるころ消えていった…。南西の空とクック湾ははまだ明るいオレンジ色に輝いていた…。
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