アメリカ最大の国立公園、ランゲル・セントエライアスはその広大な面積に8000メートル級の山脈、無数の氷河を抱えているのだが、そのほとんどが道もない未開の自然に隠されたままだ。この広大な公園を体験するには、ブッシュプレインと呼ばれるセスナに乗って、険しい峰の間を飛んだり、谷を埋め尽くす氷河を空から見下ろすのが一番だ。幸いにもこちらに来てから数回、セスナに乗る機会に恵まれた。5月下旬、セントエライアス山脈の上空を飛んだ。雲の間を抜け、氷河を抱く切り立った山頂に手が届きそうなくらい近づいた。雪に埋もれた頂上が次から次へと現れ、広大な氷河が視界に広がっていた。現実とは思えないくらい、感動的な光景だ。

数え切れないくらいの氷河が山から流れ、谷を埋め尽くす巨大な氷河に合流していく…この自然のドラマが人知れず数千年、数万年と続いているのだ。


また、この国立公園を流れる主な川の上空を飛んだ。氷河から溶け出た水から始まった川は次第に大きくなり、網の目のように広がって流れていく…。うす曇りの空から差したわずかな光を写して川が銀色に輝いた。厳しい自然の見せてくれる、一瞬の美しい光景だった。

私の住むケニコット上空を飛び、ブラックバーン山の峰をかすめた。ルート氷河がケニコット氷河に合流する地点を空から見下ろした。低空飛行で、真下に広がる氷河は迫力ものだった。

1938年に鉱山が閉鎖された後、ケニコットはゴーストタウンとして忘れられていたのだが、観光の名所として、近年再び注目を集めている。1980年、ケニコットを含むこの広大な一帯が、ランゲル・セントエライアス国立公園として指定され、ケニコット・ミル・タウンは国立歴史的建築物(National Historic Landmark)に登録された。精錬所をはじめとする当時の建物は、国立公園局によって修復保存が続けられている。
こちらに来て4ヶ月間、自然風景に加え、ケニコット・ミル・タウンの撮影をしてきた。様々な天候、時間帯に撮影してきたが、やはり夕日の下で赤く輝く時が、一番のお気に入りだ。