2013年11月22日金曜日

紅葉のチュガチ山脈

 前回に引き続き、アラスカの紅葉の写真を少し…。

11月中旬といえば、まだまだアメリカ本土を始め世界各地でも秋の季節が続いているところだが、アラスカはすっかり冬景色になってしまった。アラスカに秋が訪れるのは早い。短い夏が8月下旬には終わりを迎え、森やツンドラが徐々に色づき始め、9月半ばには紅葉のピークを迎える。

9月中旬に、アラスカ東部のランゲル山脈周辺の見事な紅葉の写真を撮影してきたのだが、その後もアンカレッジ北部のチュガチ山脈ではまだまだ木々が鮮やかな秋の色を残していた。すでに頂上付近には薄っすらと雪が積もりはじめたものの、まだまだ森は明るい黄色に輝き、低木は濃い紅色に染まっていた。
アラスカ原生の野生のバラ、プリックリー・ローズ。

ナンシー湖の湿原も秋色に染まる…。
 
チュガチ山脈の峰、ツイン・ピーク。
 
北の大地の秋は格別に美しい。わずか数ヶ月の間に春から夏へ、そして秋へと季節はめまぐるしく移り変わる。グランドフィナーレとばかりに、自然は鮮やかな原色で季節の終わりを飾り尽くす。あれから2ヶ月、11月中旬のアラスカは雪と氷に覆われている。厳しい寒さと長い夜の闇が続く冬が始まったばかりだ。

2013年10月24日木曜日

アラスカ州ランゲル・セントエライアス国立公園の紅葉


10月から11月といえば、紅葉の美しい季節だ。北米や日本、北半球の世界各地の山々が鮮やかな秋の色に染まる。ここアラスカでは、短い夏の終わりと共に、8月下旬から樹木が色付き初め、9月の半ばにはピークを迎える。

9月の良く晴れた日、アラスカ東部にあるアメリカ最大の国立公園、ランゲル・セントエライアス国立公園に撮影に出かけた。アラスカ東部の原野を覆うシラカバ(Birch)が、青空の下、明るい黄金色に輝いていた。
 
大地を覆うツンドラや低木が明るいオレンジ色から紅色に染まる。短い夏の間に、グングンと成長し、花を咲かせ、実をみのらせた草木が、最後のフィナーレとばかりに華麗な姿を披露する。北の大地特有の短いが美しい瞬間だ。

黄葉のシラカバとマウント・サンフォード

見事な紅葉に囲まれたキャビン。

ランゲル・セントエライアス国立公園の一角、ナベスナにて1930年代に金が発見された。当時の廃鉱(Rambler Mine) が残っているけれど、どことなく不気味な雰囲気が漂う…。

2013年10月12日土曜日

ヘラジカ(ムース) - アラスカ

 
アラスカをはじめ、北半球に生息するムース(moose)ことヘラジカはシカ科の中では一番大きな動物だ。大きいものだと肩高で230cm、体重800kgを超えるという、牛や馬に匹敵する大きさだ。本来、北の厳しい原野に住むというヘラジカは、アンカレッジ市内にも1,500頭も住んでいるという。その巨大なヘラジカは、街中を平然と歩き回り、住宅街を徘徊し、庭の草木を食べたり、交通の激しい道路を平然と横断したりしているのだ。アラスカならではの光景といえるだろう。
 
8月下旬から10月上旬にかけて、ヘラジカの繁殖期が訪れる。ヘラジカは一般的には単独を好む動物なのだが、この期間だけは別もの。ブルと呼ばれるオスのヘラジカは、この期間一晩中休むことなく、他のオスと繁殖権を求めて競い合う。
 
ヘラジカのオスの持つ巨大な角は、なんと毎年生え変わっているのだ。頭の上から、毛皮に包まれた角がゆっくりと顔を出し、夏の間に幅1-2メートルにも成長する。繁殖期になると角を包んでいた毛皮が剥がれて、硬い角が姿を現わす。この写真は9月中旬にアンカレッジにて撮影したもの。


2013年9月29日日曜日

アラスカ・ポーテージ氷河

 
アラスカ中に万単位で存在するの氷河の中で、最も観光客が訪れるといわれるポーテージ氷河はアンカレッジの南東、チュガチ国有林のハイウェイ沿いに位置する。このポーテージ氷河は十数年前まではハイウェイ沿いに建てられたビジターセンターの展望台から見ることができたのだが、温暖化の影響で急速に後退が進み、1世紀の間に5キロも退いてしまったそうだ。
 
ポーテージ氷河を間近で撮影するために、峠を越え、山道を歩き、現在の氷河の真正面でキャンプをした。
 
氷河湖の周りには、ヤナギランの鮮やかなピンクの花が短い夏を謳歌するかのように見事に咲き乱れていた。この辺りでは珍しい快晴の下、氷河は蒼く輝いていた。
 
轟音と共に、新しい氷山が生まれる…。

夜10時過ぎの遅い夕日は、ゆっくりと時間をかけて沈む。暖かいオレンジ色の光が氷山を金色に輝かせる…。北の大地では夕暮れの時間が驚くほど長いから、角度を変えていろいろな撮影ができるのは、実にありがたい。
 
氷河の前で、キャンプファイヤー。
 
翌朝も、運良く晴れていた。太陽がゆっくりと地平線から顔を出すと、桃色の光が氷河の上の山頂を照らし出した。光は少しづつ赤みを増して、ゆっくりと氷河を照らし始めた。朝日を浴びて、氷河が黄金色に輝く瞬間は夢を見てるように美しかった。自然が見せてくれる神秘的な瞬間を目撃し、撮影できた喜びを胸に、再び山道を歩き、峠を越えて帰る…。
 


2013年8月23日金曜日

ビッグ・アイランド(ハワイ島)③ジャングルと滝

 
ハワイといえばビーチというイメージが真っ先に浮かぶところだけど、ビッグ・アイランドことハワイ島には、荒々しい溶岩の台地から、深い緑に覆われたジャングル、さらに高さ4,000メートルを越える山まで、変化に飛んだ自然がひとつの島の中に収まっているのだ。

ハワイ島の東海岸側は年間降水量3,000mmを超える雨の多い地域。豊富な降水量と温暖な気候のため、植物は年間通じてグングンと成長するのだ。いままでいろいろなところを旅して、様々な自然の形を見てきたつもりだったけど、本物の熱帯雨林を目にするのは実は初めてだった。深い巨木に覆われた谷、垂れ下がるツル、巨木を取り巻くツタ、鬱蒼と暗い台地を覆うシダ類…、ひとくちに緑といっても無数の緑色の種類がある。この圧倒的な森の姿を写真で伝えることができるのだろうか…。
 
またこの辺り一帯の熱帯雨林には、緑の間を縫うように無数の滝が流れ落ちる。ハワイで最も有名なアカカ滝(Akaka Falls)もここハワイ島東海岸にある。緑の苔に覆われた断崖から垂直に落差134メートルという圧巻。滝つぼにはうっすらと虹がかかっていた。楽園という言葉がぴったり来るような、現実離れした光景だった。
 
落差30メートルのカフカ滝。

ハワイ島の自然の素晴らしさに、すっかり見せられてしまった。今回は移動が多く、各所の撮影にあまり時間を取れなかったのが残念。次回はもっとじっくり腰をすえて、ハワイ島のユニークな自然を肌で感じることのできるような写真を撮りたい…。

ハワイから戻った6月上旬、2週間留守にした間に、アンカレッジ周辺も見事な新緑につつまれていた。短い夏がアラスカの最も美しい季節。自然写真家にとって忙しい季節がやってきた。

次回は、アラスカの原野の写真を掲載予定。

 

2013年8月6日火曜日

ビッグ・アイランド(ハワイ島)②プナルウ黒砂海岸のアオウミガメ

 
ハワイのシンボルとして描かれているアオウミガメ(ハワイアン・グリーン・シー・タートル)は、ハワイ語でホヌと呼ばれていて、ハワイ諸島では古くから海の守り神として崇められているとのことだ。海岸開発などにより一時期は数が減ったものの、現在では絶滅危惧種にも指定されて、保護されている。
 
ハワイ島、プナルウ黒砂海岸はこのアオウミガメが浜辺に集まり甲羅干しをする場所のひとつとして知られている。そのプナルウ黒砂海岸に着いたのはそろそろ日が暮れる頃だったのだが、幅1メートル以上もある巨大な海亀が2頭、砂浜で日干しをしていたのだ。数時間ほとんど動くこともなく、目を閉じて同じ場所にとどまっていた。波打ち際にはさらに数頭の亀が浜辺に向かって泳いでいた。人間一人が乗れるような大きさだ。大人の亀は100キロから250キロほどまで成長するという。しかも70-80歳ぐらいまで生きるとのことだ。

この大きな亀はこの岩場で夜が明けるまで一晩動かずに眠っていた…。
 
翌朝、3頭の亀が潮溜まりの中を泳いでいた。彼らは全く人間を恐れない。潮が満ちて、外海に出られるのをじっと待っているようだった…。

海亀キス?

このプナルウ黒砂海岸は、海亀が集まる場所というだけではなく、自然風景もすばらしい。火山活動によって生まれた漆黒のビーチを取り囲むように茂るココヤシは楽園のような独特の雰囲気を出している。
 
神秘的な雰囲気の漂う池がビーチの後ろにひっそりとたたずんでいる…。

次回はビッグ・アイランド(ハワイ島)③ジャングルと滝



2013年7月16日火曜日

ビッグ・アイランド(ハワイ島)①ハワイ火山国立公園

 
5月下旬、遅い春がやっと訪れようとしているアラスカから、常夏のハワイへ撮影に出かけた。初めてのハワイだ。これまでアラスカはもとより、全米各地を旅してきて、北米特有の山岳地帯、原野ばかりに目を向けてきたのだが、なぜか今になって南太平洋の独特の風景、熱帯雨林を撮りたくなった。

ビッグ・アイランド(ハワイ島)はハワイ全6島の中でも1番大きい島なのだが、現在でも活動を続けているキラウェア火山を含むハワイ火山国立公園をはじめ、頂上に雪を抱くマウナケア、深い熱帯雨林、ジャングルから流れ落ちる無数の滝、黒い砂のビーチ、さらにハワイ特有の野生動物などなど、2週間の滞在ではカバーしきれないほどのバラエティに富んだ自然が島全体にぎっしりと詰まっている。
 
今回のメインのひとつはもちろんハワイ火山国立公園だ。数年にわたって活動中の2つの活火山、マウナロアとキラウェア火山。激しい噴火の際に流れ出した溶岩、噴火口の数々、溶岩洞窟など、見所はつきない。噴火活動は数年前と比べれば落ち着いたものの、キラウェア火山頂上のハレマウマウ火口からは今でも灼熱の溶岩を噴出している。夕暮れ後の闇の中に赤く輝く火口、上空にきらめく無数の星…、これまでに体験したことのない自然の神秘的な瞬間を感じた。

一帯を飲み込んでしまった溶岩が見渡す限りどこまでも広がっている。家を失ってしまった人たちには申し訳ないのだが、偉大な自然の創り出した芸術にはただただ感心するばかり…。
暖かい夕日に照らされた溶岩…。
 
溶岩の割れ目からは新しい命が芽を出していた。
 
 溶岩のトレイルは、黒い砂の海岸で行き止りだった。

次回、ビッグ・アイランド(ハワイ島)②プナルウ黒砂海岸のアオウミガメにつづく…。