2010年8月29日日曜日

シー・カヤックにてグレーシャー・ベイへ①

グレーシャーベイ国立公園の大半は海…。わずか200年前まで湾内をおおっていた大氷河が後退し、氷河によって削られ入り組んだフィヨルドと呼ばれる深い湾には無数の小さな島が浮かんでいる。陸路からアクセスできるのは限られたほんの一角だけ、園内に存在する16の氷河をはじめ、ダイナミックな風景のほとんどは海路、または空からのアプローチとなる。

グレーシャーベイ国立公園の滞在し撮影を続けること、早くも2ヶ月。南東アラスカ特有の深い森や海岸線を陸路から、氷河やザトウクジラを船から追い続けてきた。グレーシャーベイは、簡単に言うとY字型の湾なのだが、船でアクセスできるのはWest Arm(Y の左側)のみ、East Arm(右側)を訪れるにはカヤックを漕ぎキャンプしながら北上することになる。

8月上旬のある日、3人の仲間とともに2隻のダブルカヤックでEastArmに向けて漕ぎ出した。湾内を包み込む白い霧は対岸にそびえる山をおおい、氷河から溶け出した翠色の海までも乳白色に染めていた。まるで水墨画の風景に入り込んだような不思議な気分になった。

霧は次第に晴れ上がり、南東アラスカには珍しい青空が広がり始めた。湾の両側にそびえる山々が姿を現し、海はトロピカルグリーンに輝きだした。数え切れないほどの小さな入り江や無人の浜辺を通り越し、フィヨルドの海は北に行くほど狭まってきた。EastArm一つ目の氷河を通り越し、さらに北へ…。ここまで来て始めて海面を漂う氷山を発見。

眼前に今夜のキャンプ地となるリグス氷河(Riggs Glacier) が見え始めた。近くに見える氷河もまだまだカヤックでは2-3時間の距離、氷山の数は少しづつ増してきた。多数の氷山を生み出しているマックブライド氷河を通り過ぎる頃には辺りの地形が変わり始めた。植物の数が減り、むき出しの岩が両側にそびえる…。

カヤックを漕ぐこと約43Km、ついにリグス氷河にたどり着いた。わずか50年ほど前までは氷山を海に放出していたリグス氷河はすでに後退し、氷河の正面は広い平地となっていた。2頭のハクトウワシが近くの丘からこちらをうかがっていた。申し分のない素晴らしい眺めだ。

キャンプの近くに今までに見たこともないような巨大なクマの足跡を発見…。

南東アラスカには珍しい、美しい夕陽…。

2010年8月16日月曜日

ハクトウワシ(Bald Eagle)


アメリカ合衆国のシンボル、ハクトウワシは南東アラスカに数多く生存している。ここグレーシャーベイ国立公園でも頻繁にその姿を見かける。羽を広げると2メートルにもなる大きなワシが空を舞う姿は、なかなか感動的だ。

引き潮の浜辺には、打ち上げられた餌を求め数多くのハクトウワシが集まる…。魚の死骸に取り付いてむさぼり食うワシ。隙を見て、餌を奪おうと、数羽のワシがじっと見つめる。餌を求めて争うこともしばしば…。
ハクトウワシの成鳥は漆黒の体に白い頭と白い尾、白い靴下を履いたような足に鮮やかな黄色い嘴と絵になる勇々しさなのだが、5才までの若鳥は茶褐色と白のまだら。成長とともに羽の色が変わり、やがて絵に描いたような姿になる。英名はBald Eagle、直訳するとハゲワシ。成長とともに姿が変わり、大人になると頭が禿げるというのはなかなかいいネーミングだと思う。