2015年9月26日土曜日

9月のオーロラ ‐ アラスカ, フェアバンクス


白夜の季節が終わりに近づいて、夜の暗闇が戻りはじめる8月中旬、オーロラが再び空を舞い始める。この時期には珍しく、明るいオーロラが連日のように秋の夜空を照らし出していた。アンカレッジからでさえ肉眼で見えるほどのオーロラがすでに何度も出ている。

アンカレッジから見えるほどのオーロラが出るということは、北極圏に近い北へ行けば行くほど、活発で強いオーロラが見えるのだ。

9月初旬、カメラ機材とキャンプの準備をして、北へ、フェアバンクス方面に向かった。北へ向かうにしたがって天気は回復し、フェアバンクスに着くころには雲一つない最高の天気の恵まれた。

深夜零時ごろから薄いオーロラが出現。オーロラは次第に明るくなり始め、緑色の光のアーチが空をうねり始めた。湖の湖畔で撮影を始めるころには、明るいオーロラが空を駆け巡り、月と一緒にダンスを踊っていた。風もなく静かな夜空を、光のリボンは活発に動き回っていた。

今やオーロラは空全体に広がっていた。地平線からうごめく光が空を横切り、天空で波打つ。次第に薄くなっていくころには、また別の光が、地平線から出現する。終わりのない見事なショーが続いていく…。

明るい炎のような光が湖上に出現…。炎の先から光の矢が生まれ、空を駆け抜ける。

オーロラのショーは休むことなく続く。場所を移動し、もう一つの湖に着くころには、空はますます明るく照らされ、滑らかな湖面は鏡のように、明るい緑の光を映し出していた。湖に映るオーロラを撮影できるのは、湖面が凍結する前のこの時期だけ、ほんの短い間なのだ。様々な場所でオーロラを見てきたけれど、この日のオーロラは特別だった。光が地平線から真上、さらに反対側の地平線まで広がって、休むことなく動いていた。

 波のようなオーロラ。

 天空で渦を巻く光。

湖面の霧と緑の光が混ざり合って、幻想的な光景になった。

翌日、アラスカ東部、カナダの国境近くのトック(Tok)まで足を延ばした。その夜も見事なオーロラが、日暮れとともに空を駆け抜けた。次回は、トック北部で撮影したオーロラの写真を掲載予定。1週間後ぐらいにチェックしてください。


2015年9月16日水曜日

エクルートナ・レイクにての夕焼け

チュガッチ山脈に横たわる氷河湖、エクルートナ・レイクはアンカレッジから近いということもあり、お気に入りの場所に一つだ。陽の光を浴びて瑠璃色に輝く湖の風景は、いつ見ても感動的だ。度々訪れ、湖畔の様々な場所から撮影してきた。

ある夏の日の夜、夕日の撮影のために湖一望に見下ろす丘の上まで、トレイルを歩いた。7月初旬のアラスカの日は長く、日没は夜11時過ぎ。森の中をうねるように続く山道を登っていくころには、すでに薄暗くなり始めていた。近くの木々の中から、ガサガサ音がしたと思ったら、なんとブラック・ベア(アメリカ・クロクマ)が近くの藪の中を歩いていた!植物が密生していて、姿はほとんど見えなかったけど、歩き回る音だけは静かな森の中に響いていた。
森が開けて、エクルートナ・レイクが眼下に見えてきた。太陽はすでに傾き、日没間際の暖かい光が山肌を照らし出していた。雲の間から、朱色の光のリボンが対岸の峰を染める…。穏やかな湖面には、夕日に照らされたチュガッチの山々がくっきりと映っている。深夜の奇跡的に美しいい光景が目の前に広がっている。まさに撮りたかった瞬間だ。

アラスカでお馴染みの野草、ファイヤ・ウィード(和名・ヤナギラン)がすでに鮮やかなピンクの花を咲かせていた。このピンクの野草の先の部分が咲くころには、アラスカの短い夏は終わりに近づいている…、と言い伝えられている。まだ下の部分が咲き始めたところだけれど、まだ7月の初めだというのに夏の終わりを感じるなんて、寂しい気分になる。アラスカの夏は、本当にあっという間なのだ。

この日の日没は、意外にも短く感じた。緯度の高いアラスカでは日没の時間が本当に長く、時間をかけてスポットを選びながら撮影できるのだが、黄金色の光は雲の中で徐々に弱くなってしまった。

さて、これを書いている9月半ばはすでに秋も終わりに近づいている…。すでにオーロラが空を舞い始める季節になった…。次回は夏の終わりに現れた見事なオーロラの写真を紹介したいと思う。




2015年9月4日金曜日

ルピナスの咲く丘-アラスカ・アンカレッジ南部

 
アラスカの春は唐突にやってくる。雪が解けるころには、日照時間が一日数分単位で伸びているから、夜遅くまでまで明るいのだ。長い太陽の光の下で、植物はぐんぐんと成長する。わずか数日で、緑が一面に広がり、緑の間から花が咲き始める。短い季節の中で、植物たちは交代に花を咲かせる。新緑の中、ルピナスの青紫色の花が海岸沿いの丘に広がる季節が好きだ。

6月初旬、ルピナスの花畑での夕日の撮影をするために、理想の場所を求めて、アンカレッジから南の海岸沿いを探し歩いた。今年の冬は短かったから、春の訪れもいつもより一月ほど早かったとはいえ、満開はもう少し先のようだった。

なかなかイメージしていたような花畑は見つからなかったけど、そこそこ形の良いルピナスの一群を見つけて、背景になる海の向こうに陽が落ちるのを待った。6月といえばすでに白夜の季節の真っただ中、日没は午前零時近くになる。アラスカには珍しい快晴で、風も全くなく、野草の撮影をするには最高の環境だった。

太陽は時間をかけながら、海岸沿いの山の背後にゆっくりと沈んでいった…。

この日最後の光が、海辺の砂の模様を照らし出す。

こちらは、別の日に海岸沿いの山の上から撮影。ルピナスの青紫が、山の南斜面を覆っていた。

通常のルピナスは青紫色だけど、時々見かける紅色の花。

 これを書いている現在は、すでにオーロラの舞う季節…。アラスカの夏は本当にあっという間に過ぎてしまう…。