2016年11月28日月曜日

湖面に映るデナリ(マッキンリー) - アラスカ・デナリ国立公園


 デナリ国立公園に滞在中、湖面に映るデナリ山の撮影のためにリフレクション・ポンドに何度も足を運んだ。この小さな湖に映る北米最高峰の風景はあまりにも有名で、世界各地の出版物にて紹介されている、まさに絵になる風景なのだ。この湖は早朝と夕刻には比較的穏やかで、デナリ山を連なるアラスカ山脈の峰を鏡のように映しだす。


 こちらは日中の光を浴びて白く輝くデナリ。


 夕日を浴びて輝くデナリを撮影するために、2時間前に湖畔に到着…。この日は強風が吹き荒れていて、湖面は波模様。日没までに風が収まることを願いつつ、他のカメラマンたちと湖畔で待ち続けたけれど、残念ながら風は一晩中止むことがなかった…。


翌日再びトライ、湖面に映るデナリの撮影に成功!陽が沈むにしたがって、刻々と色を変える峰…、息を飲むような美しさだ。

デナリ国立公園にての撮影は記録的な晴天に恵まれ、5晩連続して夕日に染まるデナリ山の撮影ができた。デナリの天候を知る者たちとって、5日間デナリが雲に隠れることなく姿をさらし続けるなんて奇跡に近い。

次回のブログでも、まだまだデナリに手の写真を紹介するので、ぜひ見てください!


2016年10月30日日曜日

アラスカ・デナリ国立公園、北米最高峰マウント・デナリ(マッキンリー)


 紅葉に染まるデナリを撮影するために、5日ほどキャンプをした。アラスカ内陸の天気は変わりやすく、北米最高峰のデナリ(旧マッキンリー)はすぐに雲の中に隠れてしまう。5日くらい滞在すれば、夕日に染まるデナリを一度ぐらいは撮影できるだろうというつもりで計画したのだけど、記録的な好天に恵まれて、滞在中ずっと白い雄姿を披露し続けてくれた。

 8月末のデナリはすでに秋。青空の下、ツンドラの大地は明るいオレンジ色に輝いていた。短い夏が終わり、長い冬が訪れる前に自然が見せてくれる最も美しい瞬間だ。

 湖面にうつるデナリの峰。

 全長6キロのワンダー・レイクとデナリ。

 山の頂上から見下ろした湖、そして背後にそびえるデナリ。この風景を撮影するためにツンドラの藪をかき分け、急な山肌をひたすら登った。ここからの眺めは格別、個人的に一番のお気に入りだ。真昼間の日差しは強すぎ…。次回はここで夕日に染まるデナリを撮影したい。

 日没の二時間前に、お目当ての場所に到着。夕日に染まるデナリの撮影も5日目、滞在最後の晩は夕日に染まったデナリが湖に映る瞬間を撮影したい、と気合を入れてセッティング。太陽が地平線に傾いていくのを待つ。幸い、風が収まってきて、湖面のさざ波が少しづつ落ち着いてきた。白く輝いていたデナリの峰が、黄金色に染まる。そして少しづつ赤みを増し、明るいオレンジからピンク色に刻々と変わっていく…。日没直前には峰全体が明るいバラ色に輝いた。湖の表面は鏡のようにデナリの峰を映し出していた。この日の夕日は5日間の中でも最も色鮮やかだった。あまりにも完璧な光景だった。15年前、デナリ国立公園でひと夏を過ごしてから、このイメージを撮影するためにキャンプすること数回、ついに成功!

 キャンプに戻るころにはすでに辺りは暗くなていた。暗くなると同時に、オーロラが空を舞い始めた。緑の光が天空で波打ち、渦を巻いた。そして、淡い光がデナリ上空に広がった。

翌朝、湖畔で撮影をしていると、一等のカリブーがツンドラを食んでいた。あまりにも静かで、近くに来るまで気が付かなかった。大きな角の頭を上げて、こちらをちらりと見たけれど、全く気にする様子もなく、ゆっくりと目の前を横切っていった…。

今回のデナリでの撮影はあまりにも完璧すぎた。奇跡的な好天のおかげで、休む暇もなく撮影を続けることができた。デナリの神秘的なまでの美しさに、また惚れ直してしまった。

次回もデナリの写真を紹介します。ぜひ見てください!


2016年8月25日木曜日

アラスカ、デナリ(マッキンリー)南壁

 北米の最高峰、デナリ山(旧名マッキンリー)をデナリ州立公園側から撮影。ちなみにデナリ州立公園は、あの有名なデナリ国立公園とは別物で、デナリ国立公園の南側にアラスカ州の州立公園として指定されている。このデナリ山という名は、アラスカ先住民語で偉大なもの(High One)を意味し、マッキンリーと名付けられる以前から使われていたもので、昨年オバマ大統領のアラスカ来訪の際に正式名に改称された。

朝日に輝くデナリの南壁を撮影するために、デナリ州立公園のケスギ・リッジへ出かけた。このケスギ・リッジは、谷を挟んでデナリ山の真正面に位置しているから、天気さえ良ければ最高の眺めを期待できる。トレイルは谷底の森の中から始まり、高度を増すにしたがって岩の露出した地形からツンドラへと変わっていく。快晴の下、見えるはずのデナリは、雲の中に隠れていた。標高6,190 m、デナリ山の周辺には氷河から蒸発した水分が雲となり、山の周囲にとどまってしまう。そのため、晴れた日であっても、なかなか見ることができないのだ。

最初こそは登りが続くケスギ・リッジなのだが、峠まで登ると後はほとんど平坦で、針葉樹林の広がる谷を見下ろし、対岸にはアラスカ山脈の険しい峰がパノラマに伸びている。青空の下、デナリをおおっていた雲が少しづつ消えていく。キャンプを設置していると、ついに雲が晴れ、デナリの全体が姿を現した。太陽はゆっくりとアラスカ山脈の後ろに傾き、デナリをシルエット状に照らし出す。

 晴天は翌朝まで続いた。テントからデナリがはっきりと見える。7月初旬のアラスカは白夜の真っただ中、日没後、ほんの2、3時間薄暗くなるだけで、またすぐに朝がやってくる。カメラをテントの入り口にセットして、日の出を待つ。太陽がゆっくりと地平線に昇ると、まず山頂を金色に照らし出した。やがて、光がゆっくりと山麓を照らし始める…。

 日が昇るにしたがって、明るい光がデナリの山頂から下へと広がってきた。山の背後の雲が朝日を浴びて桃色に染まる…。北に行けば行くほど、日の出と日没にかかる時間が長くなる。朝日の撮影に時間をかけられるのはありがたい。

朝日を浴びて、デナリとアラスカ山脈が明るい朱色に染まっていった。名もない小さな流れが雪解けの水を谷へと運んでいく。

デナリ南壁の撮影に成功となれば、次はやはり有名な北壁を撮影しなくては、ということで、今週末からデナリ国立公園にて一週間キャンプをしながらじっくりと撮影に取り組む予定だ。8月末のアラスカ内部はすでに秋、紅色に紅葉したツンドラとデナリ北壁の雄姿を様々な角度から撮っていくつもりだ。3週間続いている雨空が晴れて、デナリが現れてくれるのを願って、行ってきます!

2016年8月15日月曜日

アラスカ、ヴァージン・クリーク滝


 6月中旬、深い緑に覆われたガードウッドというリゾート地を訪れた。アラスカにしては珍しい、おしゃれなスキーリゾートの街なのだけど、今回の目的はヴァージン・クリークの滝を撮影すること。町はずれの深い森はまるで、ワシントン州のオリンピック国立公園や、東南アラスカを思わせるような、苔に覆われた温帯雨林が茂っていた。トレイルをわずか数分歩くと、目的の滝が轟音を上げていた。

連日の雨で水かさが増していて、小さいながらもなかなか迫力のある滝だ。

苔のむした深い緑の森はあまりにも神秘的で、まるで妖精の世界にでも入り込んだような気分になった。写真から、少しでも雰囲気を感じていただけたらいいな、と思う。緑に囲まれた滝の風景には、いつもながら惹かれるものがある。


2016年7月23日土曜日

アラスカ、キナイ山脈と夕日


 5月下旬のアラスカはすでに白夜の季節、夜の10時を過ぎたというのにまだ明るかった。キナイ半島に向けてスワード・ハイウェイを南下していると、長い日照時間にようやく終わりが来て、陽が傾き始めた。すでに11時を過ぎている。太陽は時間をかけてゆっくりと西のかなた、海の向こうに沈もうとしていた。

 辺りが桃色の光に包まれて、白いキナイ山脈に最後の光を照らし出した。急いで場所を選んで、カメラをセットする。白夜の日没の空の色はため息が出るほど美しい。

 反対側の空はまさに沈みゆく夕日の輝きで、明るいオレンジ色に染まっていた。

夕暮れの空の色が時間をかけて薄れ、闇が辺りを覆いはじめた。暗闇の訪れと同時に、入り江に潮がゆっくりと戻ってくる音だけが響いていた。





2016年6月12日日曜日

アラスカ、リフレクションズ・レイク


カメラのテスト使用を兼ねて、アンカレッジ北部のリフレクションズ・レイクへ出かけた。5月初旬、チュガッチ山脈には早くも春が訪れ、辺り一面新緑に染まっていた。風一つない湖面には、まだ雪の残るチュガッチ山脈がくっきりと映っていた。カメラをセットしていて、フィルターを忘れたことに気が付いた…。夕焼けの撮影には必需品なのだが。

日没間近になり、朱色の光がチュガッチ山脈を照らし出した…。湖面は平らなまま、刻々と色彩の変わる山を映し続ける。フィルターを忘れたので、上の写真は後で編集の時に空を暗く仕上げたものだ。

太陽が地平線に沈むと、辺りは紫色の光に包まれた。この写真はHRDにて編集、露出の違う3枚の写真を重ね合わせて、1枚の写真として仕上げた。

5Ds R のテスト撮影にはとりあえず満足。画素数が大幅にアップしたから、高度の大型プリント販売が可能になる予定だ。興味のある方は、ぜひよろしく。


2016年5月21日土曜日

新緑!-アラスカ、スワード・ハイウェイ


 今年の春は例年より2か月も早くやってきた。冬も雪が少なく、気温も割と高めだったけど、4月中旬にはすでに新芽が出始めていた。昨年も春の訪れが早かったけど、今年はさらに早い。温暖化の影響が進んでいるのか、アラスカの冬が短くなっているのを感じる。

 アンカッレジから南下して1時間ほど、海岸沿いにため息の出るような風景が現れる。太古の昔、この辺り一帯をおおっていた氷河によって削られた海岸線。チュガッチ山脈の険しい山々が、海を囲むようにそびえる。緑が色濃く、春から夏にかけて様々な野草が花を咲かせる。ハクトウワシが空を舞い、ドール・シープが岸壁に群れる。何度訪れても、新たな感動に包まれる。特にこの新緑の時期が私のお気に入りだ。

 青い空の下、白樺の森の中を歩く…。新緑の「春の香り」に包まれる。冬がやっと終わって、アラスカの短い活動期が始まったばかりだ。森が開け、眼下に山と海のパノラマが現れた!場所を選んで三脚を立て、撮影を行う。

 白樺の葉はまだ黄緑色、対岸の峰にはまだまだ雪が残っている。アラスカの季節の移り変わりは早い。間もなく、この辺りも鮮やかな野草に飾られる。

2016年4月19日火曜日

若いムース(ヘラジカ)-アラスカ、マタヌスカ


 アラスカ中南部に早くも春がきた。例年なら、4月にはまだ雪が残っているのに、アンカレッジ周辺の低地では、すでにひと月以上も前から雪が無くなっているどころか、緑の芽が出始めているのだ。昨年の冬も短かったけど、今年はさらに春の訪れが早いようだ。

2月下旬、まだ雪が残るチュガッチ山脈のふもとのマタヌスカ・ヴァレーに足を延ばした。冬の間、食料を求めて、数多くのムース(ヘラジカ)がこの谷一帯に集まる。白樺の樹皮や小枝など、食べられる植物を探して山を降ってきたムースが民家の間をうろつくのは珍しくはない。それどころか、庭に出没して、植木を食べてしまうのだ。人間が危害を加えないのをわかっていて、子連れでやってくるムースもよく見かけるくらいだ。この若いムースも白樺の枝を食んでいた。まだ幼さが残る若いムースの額には、小さなコブのような角が顔を出してる。夏の間にこの角が成長して、秋には立派な角が完成する。撮影を続けていると、こちらに気付いたようで、目が合ってしまった。大きな瞳で、凝視が続く…。

 突然走り出した。

 速度が増す…。

 アラスカ山脈の峰はまだ真っ白。

陽の光に輝く新雪。春の気配を感じる…。

冬が終わり、アラスカに再び活動の季節がやってきた。


2016年3月26日土曜日

カララウ渓谷(ナ・パリ・コースト) ‐ ハワイ・カウアイ島


 ハワイ、カウアイ島北部、ナ・パリ・コーストの岸壁に刻まれたカララウ・トレイルを2日間かけて歩き、ついにカララウ・ビーチへ到着した。キャンプ用品一式とカメラ機材を背負って、雨の中どろどろのトレイルを歩き、足を滑らしたら命を落とすという崖っぷちの細道を何とか乗り越え、行き着いた先には、楽園と呼ぶにふさわしい光景が待っていた。キャンプを設置し、荒波の打ち寄せる海岸に沈む夕日を撮影した。

 翌日も晴天。この日はカララウ渓谷を探索し、撮影を行う予定だ。切り立った岩山に三方を囲まれ、太平洋に面したカララウ渓谷には深い熱帯雨林の緑が生い茂り、豊かな水を湛えた急流が海へ向かって流れている。2000年以上も前にポリネシアからカヌーに乗ってやってきた先住民たちがタロイモやココナツを持ち込んで、この谷を開拓。特にタロイモはハワイ先住民にとって欠かすことができない食材で、この地でタロイモの栽培を行ったという。その先住民たちも、1900年代を最後にカララウの地を去り、カウアイ島の別の場所へと移り住んだという。現在では、このカララウ渓谷の奥地にヒッピーたちが隠れ住んでいるという噂を聞いた。彼らもまた、タロイモや野菜を育て、自給自足の生活を送っているらしいという。

 ジャングルの奥深くに隠れるヒッピーたちの菜園を目指して、渓谷に分け入った。渓流沿いに続くトレイルは緑の下生えの中に隠れつつも、何とか上流に向かって渓谷の奥へ奥へと導いていった。日中とはいえ、森の中は薄暗い。特に川の周りには緑が生い茂り、これぞ熱帯という風景を作り出していた。

 深い緑の中に迷うこと数回、流れを渡ること数回…、ついに秘密の菜園へと続くトレイルを発見。

 森が開けると、眼前に広がるのはどこか懐かしい光景…。まるで小さな田園風景のようなタロイモ畑と、その周りに植えられた数々の野菜、たくさんの果実を実らせた巨木…。熱帯雨林の緑に囲まれ、その後ろには緑の岩山がそびえたつ…、まるで太古の村にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えた。どこからともなく、上半身裸の女性がのこぎりを担いで現れ、にこやかに歓迎してくれた。私たちを警戒するどころか、とってもフレンドリーに近くの木に実る果実の説明までしてくれた。彼女はここにきて3か月だという。カララウに住むヒッピーたちは現代生活に疲れ、シンプルな暮らしを求めてこのジャングル奥地の楽園にやってくる。数か月から半年、中には十年以上もここに住んでいるという強者もいる。白髪に長いあご髭を伸ばした老人、グリズリーも長年の住人で、野菜を育て、果物を摘み、魚を釣り、野生のゴートを狩る、という自給自足はもちろん、果実から造った自家製のワインとキャンプ用品との物々交換をして必需品を手に入れているそうだ。ナパリ・コースト州立公園の中にあるカララウ渓谷に住むことはもちろん違法なのだけど、この渓谷の奥深くにはヒッピーたちに安らぎを与えるものがあるのは事実だ。

カララウ・ビーチに戻ると早くも日が傾き始めていた。西側の空に広がる雲が鮮やかな朱色に染まり、前日とは違う夕焼けを見せてくれた。同じ場所でも、日によって、または季節によって、自然は全く違う瞬間を見せてくれるのだ。日没直後に大型クルーズ船が目の前を横切っていく。ここ、カララウ・ビーチは人里離れた楽園とはいえ、ナ・パリ・コーストはカウアイ島でも一番の人気観光地だから、ボートやヘリコプターから眺める観光客たちが後を絶たない。特に上空を飛ぶヘリの騒音は早朝から日没まで途絶えることがないのだ。

カララウ・ビーチのキャンプ場。森の中の好きな場所にテントを張ることができる。

 カララウ・ビーチに流れ落ちる小さな滝。キャンパーたちの貴重な水源はもちろん、ここでシャワーを浴びる人たちもいる。

「エデンの園」とまで言われるナ・パリ・コースト(カララウ・ビーチ)の神秘的な美しさを写真で表現するのはなかなか難しいけど、少しでも雰囲気を感じ取ってもらえれば良かったと思う。

 数日後、カララウ渓谷を谷の上から見下ろす機会に恵まれた。直線距離でわずか数キロなのに、道路を使うとカウアイ島をほぼ一周することになり、約80マイル(約130キロ)、片道2時間半かけて、コケエ州立公園内にある展望台に向かった。はるか上空から見下ろしたカララウ渓谷は深い緑に覆われていた。

太陽が水平線に近づくにしたがって、断崖をオレンジ色に照らしていった。日没の瞬間、頂上を朱色に染めあげ、ゆっくりと暗闇に包まれていった。わずか数キロ下のカララウ渓谷が遠い場所に感じた…。