2011年4月29日金曜日

天空の炎:3月のオーロラ

3月の初め、見事なオーロラが二夜にわたってアラスカ中の空を明るく照らし出した。

北極圏に近いここフェアバンクスでは、緑白色の明るい光が天を駆け抜け、満月に近い月と明るさを競い合っていた。

燃えさかる炎のような光が天をうねり、肉眼で見えることは珍しい紫の光が、緑のカーテンの縁をフリルのようにに飾っていた。天頂ではコロナと呼ばれるオーロラが花火のように天から降り注いだ。

アラスカ先住民の間には、古くからオーロラにまつわる伝承のようなものがたくさん存在している。なにしろ明るい光が天を覆うのだから、多くの人達がオーロラを恐れていた…。興味深い伝承のひとつとして、亡くなった先祖の霊たちが空を駆け、球技をしているのがオーロラとなって現れるという話がある。球技の玉として使われているのは、大型海洋動物・トドの頭蓋骨だという。

南東アラスカの旅に出ることになった。現在フェリーでウィティアを離れ、アラスカ州都・ジュノーに向かう途中だ。ジュノーから、また別のフェリーに乗り換え、南東アラスカで最も美しいといわれているシトカへ向かう。シトカに1週間滞在し、撮影を行う予定だ。シトカからの最新の写真とエッセイは、ブログにて。

2011年4月14日木曜日

夕焼けの空から垣間見たマッキンリー

ある冬の日の夕方に、フェアバンクス郊外の原野を小型飛行機で飛んでいた。フェアバンクスはアラスカ第二の都市で人口約3万5千人なのだが、ちょっと町を外れると、未開の大自然が果てしなく続く…。
小型機は山の間の谷間に沿って、蛇行しながら流れるチナ川の上空を風に揺られながら飛んでいく。真冬の山は雪に覆われ、凍りついた川には雪が積もり、上空から見ると白い一本の道のようだった。山がどこまでも続いていて、人間の痕跡はほとんど見当たらない。

太陽がゆっくりと地平線に沈んでいき、暖かいオレンジ色の光が空を包む…。はるか先の地平線上にアラスカ山脈の峰が険しくそびえていた。さらにその先に、なんと北米最高峰・マッキンリーが姿を現した!夕日に照らされて、ぼんやりと浮かび上がるシルエットはまさにデナリ(マッキンリー)の相貌をしていた。

日が沈むと辺りが淡いパステルカラーに包まれ、近くの峰を桃色に照らし出した。夢の中にいるような美しい瞬間だった。