2017年11月5日日曜日

アラスカ、 マクニール・リバー野生動物保護区(McNeil River State Game Sanctuary)➁-サケを獲るヒグマ


7月下旬、アラスカ、 マクニール・リバー野生動物保護区に滞在し、サケを獲るヒグマの撮影を行った。この短い夏の数週間、サケ(チャム・サーモン)が産卵のために生まれ故郷のマクニール川に戻ってくる。そのサケのごちそうを求めて、数多くのヒグマたちがこの川沿いに集合するのだ。川いっぱいのサケたちは、急流の段差が続くマクニール・リバー滝で、泳ぐ速度が急激に落ちてしまう。待ち受けたヒグマたちが、その瞬間を狙いごちそうにありつく。滝の周辺は特等席だから、体の大きい雄のクマたちが常にそこに居座っている。十数頭の巨グマたちがひしめき合う風景は、かなりの迫力ものだ。

 サケを獲るとひとくちに言っても、クマたちそれぞれのスタイルがある。滝の上に立って、サケがジャンプしてくる瞬間を狙うクマたち。渾身の力を振り絞って、滝を登ったサケたちを待ち受けるのはおなかをすかしたクマ、サケにしてみればなんて絶望的なんだろう。

 この紅一点の雌グマは、毎日このお気に入りの急流に立って、流れを登ってくるサケに狙いを定める。サケが近くを通った瞬間、素早い動きでサケを捕まえる。彼女のテクニックはなかなかのもので、周りのどの雄グマよりも成功率が高かった。

数頭の巨グマたちが、水しぶきを浴びながらサケの通るタイミングを待つ…。

このクマは、三本の足で急流に立ち、後肢一本を岩に立てかけて、サケを待つ。サケが通るタイミングを見計らって、岩をけり、加速をつけて飛び込む…のだが失敗に終わった…。

 滝に集まるヒグマたちの大半は辛抱強く待つことで、近くを泳ぐサケを捕らえるのだけど、この若いクマは、活発にサケを追いかけている。下流の深みに集まるサケに狙いをつけて、勢いよくジャンプ。豪快に水しぶきを上げてダイブを繰り返すけれど、なかなかうまくいかない…。それでも、水を振り払い、ジャンプを繰り返す。体力の無駄遣いのように見える。何度もトライして、やっとサケを捕まえた。

ユニークなのが、この〝スノーケリング″スタイル。

この、体に大きな傷のあるひときわ巨体のクマは、急流の波にもまれながらひたすら待ち続ける。長い時間、川を凝視して、タイミングを狙っている。突然、川に潜り、サケを加えて浮上。クマたちのほとんどが、撮った魚を浅瀬や陸に持っていって食べるのだけど、この巨グマはそのまま波にもまれながら食べ、またすぐに次を狙う。なかなか腕が良く、次々に獲物を捕らえていた。

長年のテーマの一つとして、野生のクマの撮影を行っていて、今までにいくつかのクマの集まる場所を訪れているけれど、このマクニール・リバーに勝るところは他にないだろう。

現在、数千枚にも及ぶ写真の編集作業の真っただ中。これからも少しづつ、マクニール・リバーからのクマの写真を紹介していく予定だから、どうぞよろしく!


2017年9月30日土曜日

アラスカ、 マクニール・リバー野生動物保護区(McNeil River State Game Sanctuary)


自然写真を撮り始めたころから、野生に生きるクマの撮影には情熱を持ち続けていた。これまでにクマの集まる国立公園などを数か所訪れて撮影をしてきたけれど、アラスカのマクニール・リバー野生動物保護区は何といってもナンバーワンだ。

マクニール・リバー野生動物保護区はアラスカ州南西、アリューシャン山脈沿いの未開の原野に位置する。クマの集まる滝として最も有名なカトマイ国立公園の北に隣接し、サケの遡上する 7月から8月には、80頭にも及ぶヒグマ(ブラウン・ベア、又はグリズリー)がマクニール川沿いに集まってくる。マクニール川一帯は1967年より野生動物保護区に指定され、狩猟が禁止されている。観光化されたカトマイ国立公園とは違い、マクニール・リバー野生動物保護区は滞在者を1日10名までに限定し、4日間区切りで許可書を出している。この許可書を獲るのが大変難しい。

 7月の下旬、マクニール・リバー野生動物保護区に到着。アラスカの原野ではよくあることだけど、マクニール・リバー野生動物保護区には道路が通じておらず、対岸のキナイ半島から、小型機をチャーターして海を越えることになる。小型機で約1時間半、満潮時のマクニール湾に水上着陸、空からも川沿いに集まるクマたちが見えた。

クマの集まる観察スポット、マクニール滝までは、キャンプ拠点から約3キロ歩く。レンジャー・ガイドに引率され、川を渡り、草原を越えて、マックニール滝まで通った。私たち”滞在者”はキャンプの外に個人で出ることは固く禁止されていて、ガイドの後について、10人一塊になって歩く。クマの目には、個人の人間というよりも、1匹の大きな動物として映るのだ。夏の間、この大きな動物を見慣れているクマたちは、私たちの存在を無視し各自が普通通りの行動を続ける。マクニール湾の浅瀬にはこの時期子グマを連れた母グマが集まっていて、彼らの通過を待つことが度々、滝への3キロの道のりが2時間から4時間もかかった。

ついにマクニール滝に到着。丘の上から初めて滝を見下ろすと、約20頭にも及ぶ巨グマたちが、一堂に集まってサケを獲っている風景は圧巻だった。

グループは半分に分けられ、上下2つある”見学スポット”にひと塊に座って見学する。下のスポットは滝にやってくるクマたちが間近を横切るので、最初は冷や汗ものだった。ちなみに場所は途中で交代する。大型車ほどもある巨大グマが手の届きそうな距離までやってくるけれど、マクニール・リバー野生動物保護区ではクマの観察のプログラムが始まって以来、50年間一度も事故は起こっていないのだ。厳しいルールを守ることによって、クマたちと見学者は一時的に共存している。

 川いっぱいに登ってくるサケを求めて、クマたちは活発に動き回っていた。

獲ったサケを食べると、また川に戻り次を狙う。複数のクマたちが、同時にアクションを繰り広げるから、どのクマを撮影しようかというぜいたくな問題に悩むことになる。

 クマ同士の争いも後を絶たず…。

マクニール滝のフィッシング・スポットは巨大な雄グマの力争いの場。まだ若いクマたちや、子熊を連れた母グマたちは競争率の低い河口や湾沿いに集まっていた。母グマが湾の浅瀬で獲物を追いかけている間、子グマたちは岸辺で遊んだり昼寝をしていた。滝への往復の途中に、立ち止まりクマの一家を撮影することもしばしば。兄弟同士で遊ぶ子グマたちを間近で見ることができたのは、この旅でのボーナスとなった。

マクニール滝での4日間、撮影した写真は数千枚…。ダウンロードして、選出するだけのプロセスに1か月以上もかかった。編集作業を始めてすでにひと月が過ぎたけれど、まだまだこれから数か月コンピューターに向かうことになるだろう。これから少しづつブログに掲載していく予定なので、気長にお待ちください。





2017年8月13日日曜日

ハワイ・オアフ島、タンタラスの丘〝緑の壁″


 ハワイに移り住んで早くも1年が経つけれど、ここオアフ島の自然の豊かさには、驚きがいっぱいだ。有名なビーチから少し車で走っただけで、緑豊かなコオラウ山脈のふもとに入ってしまう。最高峰960mの切り立った峰が、海岸から島の中央部に向けてそそり立つ。かつて活火山だった山脈が、今では深い緑に覆われて、まるで別世界のようだ。

曲がりくねった山道を登っていくにしたがって、緑の密度が増し、雨量の多い頂上付近にもなると、巨木にツタの生い茂るジャングルが現れる。あまりにも圧巻的な緑のカベ!

雲の間から薄日が差すのを待っていると、密林の間から、赤い車が現れた。深い緑に対照的な赤が冴えて、期待以上の絵になった。

ハワイといえば、海と思われがちだけど、なぜか熱帯雨林や山の風景に惹かれてしまう。海岸風景の撮影もしているけれど、やっぱり山の風景に力が入ってしまう。近々、ハワイらしい海の風景も紹介する予定なので乞うご期待。

その前に次回は、アラスカで撮影したばかりのサケを獲る熊の写真を紹介予定。




2017年7月15日土曜日

ハワイ、オアフ島・マノア・フォールズ(マノアの滝)とジャングル


 報告が遅くなっってしまったけれど、6年間住んだアラスカを去り、心機一転でハワイへ拠点を移しました!

ハワイというと、〝海とビーチ″というイメージかもしれないけれど、じつは熱帯ならではの魅力的な自然風景が、島中に散らばっているのだ。数年間撮影を続けてきたアラスカや、アメリカ本土の自然とは異なる、ハワイならではの自然風景がとても新鮮に見える。しかも年間通じて気候がいいから、休むことなしに撮影に出かけてしまい、編集はそっちのけ、気が付いたらあっという間に半年が過ぎてしまった。7月のハワイは真夏、常夏のハワイとは言えども、わずかながら季節の変化はあるようで、この季節は湿気が多くて蒸し暑い日が続いている。そんなわけで、最近はエアコンのきいた部屋で、写真の編集をする日が多くなった。

 ハワイの自然風景の中でも、特に深い緑の茂る熱帯雨林と滝のある風景に惹かれている。有名なワイキキ・ビーチから約30分足らず内陸へ走ると、まるで別世界。雨の多いマノア渓谷には緑の巨木がうっそうと茂り、まさに〝ジャングル″の世界だ。落差約60メートルのマノア・フォールも美しいけれど、個人的には滝よりも谷中に広がる森の圧巻的な風景に魅力を感じた。

 滝を囲む密林の雰囲気を撮影をするために、イメージに合った場所を探し渓谷を歩く…。流れの中に三脚をセットして、雲の間から薄日が差すのを待ち続けた。待つこと約1時間、撮影が終わるころには、両足とも蚊に襲われていた。

 マノア・フォールまでは簡単にたどり着いてしまったから、さらにその先に続くトレイルを探索。深い森の中に続くトレイル沿いに、竹林が現れた。ハワイの各地にはなぜか自然の竹林が存在して、アメリカとアジアの文化を融合させたような独特の神秘感が漂う。またしても、蚊の大群に襲われながら、ここで撮影。

 雨の多いジャングルの小道は、先に進めば進むほど泥だらけ。森が開け、ヌウアヌ渓谷(Nu'uanu Valley)を見下ろす崖っぷちに到着。見渡す限り、緑!人口の密集したホノルルの近くに、こんな未開の谷が残っていることに驚きだ。

 トレイルからマノア渓谷に戻ると、谷に生い茂る巨木の高さに改めて圧巻。自然の芸術が空をおおいつくしていた。この雰囲気を出すためには、カメラを空に向けて撮影。何度もトライして、首が痛くなるころにやっと気に入った一枚が撮れた。

それでは、ここで、ハワイならではの海の風景を一枚。オアフ島南部のサンディ・ビーチから、日の出前の瞬間です。これからも、南国特有の自然写真をアップしていきますので、ぜひまたチェックしてください。

来週から、熊の撮影のためにアラスカへ向かいます。アラスカ南西部、マクニール川自然保護区への滞在許可証を手に入れました。アラスカ南西部、カトマイ国立公園の北に位置する、マクニール川自然保護区には、遡上する鮭を求めて、野生のヒグマが集まってきます。ピーク時の7月下旬には70頭を数えることもあるとか…。野生の熊を撮影することはライフワークの一つであり、マクニール川自然保護区を訪問することは長年の夢だったので、気合を入れて頑張ってきます。戻り次第、ご報告しますので、よろしく。



2017年3月29日水曜日

アラスカ・デナリ国立公園の秋


 昨年の9月に一週間ほどデナリ国立公園に滞在し、北米最高峰・デナリ(マッキンリー)の撮影を行った。前代未聞の好天に恵まれ、滞在中毎晩夕陽に染まるデナリ山の撮影に成功。これまでのブログで数回にわたって写真を紹介してきたけれど、デナリからの写真は今回で最後。今回は、紅葉に染まる風景を中心に集めてみた。

上記の写真は朝日に輝くデナリ山と紅葉の大地。

 アラスカの秋は短いけれど、一番美しい季節だと思う。夏の終わりが近づき、アラスカ内陸に夜の闇が戻ってくる頃、ツンドラの大地が黄金色から真紅に色づく。夕陽に照らされて、温かみを増す時間が特に好きだ。

風が収まり、湖の表面に映しだされるデナリの峰。デナリの映る場所を求めて、湖の周りを機材を担いで歩き回った。

 カリブーの落とし物。カリブーの角は毎年生え変わる。後ろの白い山はもちろんデナリ。

 氷河におおわれたデナリの峰は、日没間際の光を浴びてバラ色に輝く。湖上にそびえる白い峰。有名な写真家、アンセル・アダムスもここで撮影を行った。1948年、大判カメラを大型の三脚に乗せて撮影したモノクロの「Mount McKinley and Wonder Lakeマウント・マッキンリーとワンダーレイク」は印象深い。

 この年はブルーベリーの当たり年。見事に熟したブルーベリーの丘がどこまでも続くツンドラの大地。アラスカに6年くらい住んだけれど、こんなに粒の大きい野生のブルーベリーは見たことがなかった。そのブルーベリーの丘が見渡す限りどこまでも続いているのだ。

秋のアラスカは朝夕が冷える。霜に覆われたツンドラの大地に自然の芸術を発見。

最後の一枚はポリークローム・パスから。

これを書いている3月下旬の現在、デナリ国立公園のある内陸アラスカは氷点下、深い雪に覆われている。

デナリ国立公園での撮影を終えた直後、6年間住んだアラスカの別れを告げて、拠点をハワイへと移した。ハワイと聞くとビーチリゾートというイメージしか浮かばないという人がほとんどかもしれないけど、緑の熱帯雨林に覆われた山脈、数多くの滝、山に囲まれた入江などなど自然写真家にとって魅力的な場所が結構あるのだ。そんな知られざるハワイの自然を撮影していきたいと思う。次回のブログでは、ハワイからの写真を紹介予定。2週間後ぐらいにぜひまたお訪ねください。

7月下旬にはアラスカ、マクニール川自然保護区にてサケを獲りに集まる熊たちの写真撮影に向かいます。数の限られた貴重な許可書を所得したものの、アラスカまでの旅費、さらに自然保護区のある未開の地への小型機による運送費、撮影に必要な機材などかなりの出費がかかってしまう予定。そんなわけで恥ずかしながら、少しでも手助けをお願いして募金を募らせていただきます。こちらのサイトhttps://www.gofundme.com/r5jc2から少しでも簡単に募金をしていただけます。米25ドル(約2500円)以上募金をしていただいた方には、お礼として写真を送らせていただきます。ぜひよろしく!


2017年1月30日月曜日

アラスカ・デナリ国立公園の野生動物


 北米の最高峰・デナリ(マッキンリー山)で知られるデナリ国立公園は、野生動物の聖地としても有名だ。6,000,000エーカーにも及ぶ広大な原野には、大小さまざまな動物が野生のままに生息している。8月下旬、秋のデナリの動物たちは、間もなく訪れる長い冬に備えて、食欲旺盛。この時期の動物たちは厳しい冬に向けて体脂肪を蓄え、厚い毛皮に包まれる。ムースやカリブーなどのシカ類はこの時期に立派な角が完成する。野生動物の最も美しい姿を撮影するのには最高の季節だ。

 国立公園では野生動物が完全に保護されているため、動物たちも頻繁に行き交うシャトルバスを見慣れてしまっている。グリズリーベアが公園内の道路を堂々と歩くことも珍しいことではない。この大きなカリブー(トナカイ)もパーク・ロードのすぐそばで草を食んでいた。

 野生動物のクローズ・アップを撮影できるのは魅力的だけど、個人的には〝雄大な自然風景の中に生きる動物たち″をイメージした写真を好んで撮影している。こちらは、デナリ(マッキンリー山)を背景に紅葉の丘を歩くグリズリー。

 紅葉のツンドラにて、ムース(ヘラジカ)の雄姿。朝日に輝く丘。

 鮮やかな紅葉の中をさっそうと歩くムース。

 ポーズを決めるホッキョクジリス。

紅く染まるツンドラの谷を駈け抜くカリブー。

次回もまたデナリ国立公園からの写真を掲載予定。2週間後ぐらいにチェックしてください!