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2016年4月19日火曜日

若いムース(ヘラジカ)-アラスカ、マタヌスカ


 アラスカ中南部に早くも春がきた。例年なら、4月にはまだ雪が残っているのに、アンカレッジ周辺の低地では、すでにひと月以上も前から雪が無くなっているどころか、緑の芽が出始めているのだ。昨年の冬も短かったけど、今年はさらに春の訪れが早いようだ。

2月下旬、まだ雪が残るチュガッチ山脈のふもとのマタヌスカ・ヴァレーに足を延ばした。冬の間、食料を求めて、数多くのムース(ヘラジカ)がこの谷一帯に集まる。白樺の樹皮や小枝など、食べられる植物を探して山を降ってきたムースが民家の間をうろつくのは珍しくはない。それどころか、庭に出没して、植木を食べてしまうのだ。人間が危害を加えないのをわかっていて、子連れでやってくるムースもよく見かけるくらいだ。この若いムースも白樺の枝を食んでいた。まだ幼さが残る若いムースの額には、小さなコブのような角が顔を出してる。夏の間にこの角が成長して、秋には立派な角が完成する。撮影を続けていると、こちらに気付いたようで、目が合ってしまった。大きな瞳で、凝視が続く…。

 突然走り出した。

 速度が増す…。

 アラスカ山脈の峰はまだ真っ白。

陽の光に輝く新雪。春の気配を感じる…。

冬が終わり、アラスカに再び活動の季節がやってきた。


2016年1月4日月曜日

アラスカ州チュガッチ山脈、ラビット・レイク


 新年おめでとうございます

2016年が皆様にとって良いお年でありますように。
今年もアラスカをはじめ、北米の大自然が美しく輝く瞬間を撮影し続けます。今年もどうぞよろしくお願いします。


アンカレッジからほんの20分も車で走ると、アラスカ州最大の都市郊外とは思えないような未開の原野が四方に広がっている。特にアンカレッジを取り囲み、400キロほど続くチュガッチ山脈の変化にとんだ美しさはため息ものだ。氷河を抱く険しい山岳風景にちりばめられた無数の湖、野草の咲く湿原、雪解けとともに流れ落ちる無数の名もない滝…、などなど訪れるたびに新たな発見がある。ここ数年間、チュガッチ山脈の撮影に力を入れてきた。

昨年の5月半ば、長い登りのトレイルを歩き、ラビット・レイクを訪れた。トレイルの始まる、海岸沿いは春真っ盛りで、新緑の黄緑色が山をおおっていたのだが、山の懐に入っていくにしたがって、季節は逆戻り。茶褐色の枯草の丘に残雪、まだまだ白い峰、標高の高い原野ではまだ冬が続いていた…。ラビット・レイクもまだ凍りついていた。それでも、深い青空に太陽の光はアラスカの山中にも春の訪れを告げていた。青空の下、雪景色を撮影。


 季節は変わって、7月下旬のラビット・レイク。短い夏の間、緑の植物と野草が競い合って成長する。エメラルド色の湖は数か月後に再び凍りつく。訪れるたびに全く別の顔を見せてくれるチュガッチ山脈の魅力は尽きない。

アラスカの夏は本当に短い。真冬のチュガッチ山脈は現在、雪と暗闇に包み込まれている。

アラスカに移り住んでから恒例となった、ハワイにての撮影プロジェクトで、今年はカウアイ島を訪れた。〝ガーデン・アイランド″と呼ばれる緑豊富なカウアイ島にて、忙しいスケジュールの中、南太平洋の楽園らしい風景にこだわって撮影。「ジュラシック・ワールド」にも登場した緑の絶壁、ナ・パリ・コーストをカメラ機材一式背負って2泊3日のバックパッキングで踏破。次回のブログでその中から数枚を紹介したいと思います。


2014年4月2日水曜日

マッキンリー上空に舞うオーロラ


厳しい寒さの続く2月初旬、アラスカからカナダ、さらにアメリカ本土にまで実事なオーロラが出現。この時を待っていた。北米最高峰マッキンリー山上空に舞うオーロラを撮影すべく、アンカレッジから北へ向かった。幸い、空は見事に晴れ渡り、雲ひとつない。早くも午後9時ごろから北の空にうっすらとオーロラが弧を描き始めていた。こんなに早く出ているということは、良いオーロラの夜になる前兆だ。

アンカレッジから約2時間ほど北上すると、マッキンリー山の南壁が見え始める。絵葉書やガイドブックなどで有名なマッキンリーの写真のほとんどは、デナリ国立公園内の北側から撮影されたものが多いのだが、その有名な北壁の見える一角は、冬の間零下50度を下回る厳しい原野にあり,園内唯一の未舗装道路も深い雪の下に隠れ閉鎖されている。極地の冬に旅慣れていて、犬ゾリかスノーモービルの達人でもない限り、真冬のデナリの原野を訪れるのには限界がある。今回は、アクセスしやすい南側からの撮影になる。 


ようやくマッキンリー山の見える場所にたどり着いた頃には、うっすらと出ていたオーロラがさらに薄くなり、消えてしまった。 

アラスカ山脈を一望できる場所に移動したものの、オーロラは一向に現れない…。夜11時を過ぎ、寒さが増してきた。見事な星空の下で30分ほど待っていたが、空は静まり返ったままだ…。とりあえず、車まで戻って待つことにする…。長い長い夜が始まった。 

翌朝5時、ついにオーロラが出始めた。防寒具を身につけ、カメラ機材を背負い、すでに選んでおいた場所へとトレイルを走る。空には薄い緑色のオーロラがゆっくりと光の筋を伸ばし、ゆらゆらと動き出した。


一晩中頭上を照らしていた明るい月が沈むと、辺りは急に暗くなり、オーロラが輝きを増した。緑色の光のカーテンの下に、淡いピンクが肉眼でも見えた。
見事な光のカーテンがマッキンリーをはじめとするアラスカ山脈の上空に舞い続けた。あまりにも完璧なショーを目前にひたすらシャッターを切り続けた。 

マッキンリーの上をドラゴンが舞う。 

オーロラの見事なショーは1時間ほど続き、早朝6時ごろうっすらと消えていった…。

2013年5月26日日曜日

アラスカ、チュガッチ山脈


長い冬がようやく終わって、アンカレッジ周辺にもやっと春がやってきた。日照時間が日に日に延びて、5月中旬の今はすでに白夜の始まり、夜の11時過ぎまで明るい。太平洋岸沿いのアンカレッジ周辺はほとんど雪が消え、少しづつ新芽が出始めているものの、周辺の原野では今まさに雪解けの真っ最中。まもなくアウトドアを楽しめる季節がやっくる。

カナダ国境からアラスカ西部の海岸地帯に320kmほど広がるチュガッチ山脈は、アンカレッジの丘陵地から20分ほどでアクセスできる。険しい山岳地帯から湖、氷河、サケの上ってくる大河、数多くの野生動物が生息する変化にとんだ原野は、自然愛好家には大人気、もちろん自然写真家にとっても限りない可能性を与えてくれる場所だ。

雪解けが始まった自然の中で、ふっと見かけた芸術作品。まるでガラス細工のような見事な模様の刻まれた氷の下を、雪解け水が流れる…。

凍った滝に降りかかった粉雪。

チュガッチ州立公園の中でも絶景のエクルートナ湖。5月半ばになってやっと少しづつ解け始めた。

チュガッチ山脈とクック湾をバラ色に染める夕日。(1月に撮影)

犬ぞりチームがチュガッチ山脈の原野を走り抜ける…。

アンカレッジ背後にそびえるチュガッチ山脈。

間もなくやってくる短い春とほんの数ヶ月の夏。新緑に輝くチュガチの自然を撮影するのが楽しみだ。

2011年4月29日金曜日

天空の炎:3月のオーロラ

3月の初め、見事なオーロラが二夜にわたってアラスカ中の空を明るく照らし出した。

北極圏に近いここフェアバンクスでは、緑白色の明るい光が天を駆け抜け、満月に近い月と明るさを競い合っていた。

燃えさかる炎のような光が天をうねり、肉眼で見えることは珍しい紫の光が、緑のカーテンの縁をフリルのようにに飾っていた。天頂ではコロナと呼ばれるオーロラが花火のように天から降り注いだ。

アラスカ先住民の間には、古くからオーロラにまつわる伝承のようなものがたくさん存在している。なにしろ明るい光が天を覆うのだから、多くの人達がオーロラを恐れていた…。興味深い伝承のひとつとして、亡くなった先祖の霊たちが空を駆け、球技をしているのがオーロラとなって現れるという話がある。球技の玉として使われているのは、大型海洋動物・トドの頭蓋骨だという。

南東アラスカの旅に出ることになった。現在フェリーでウィティアを離れ、アラスカ州都・ジュノーに向かう途中だ。ジュノーから、また別のフェリーに乗り換え、南東アラスカで最も美しいといわれているシトカへ向かう。シトカに1週間滞在し、撮影を行う予定だ。シトカからの最新の写真とエッセイは、ブログにて。

2011年4月14日木曜日

夕焼けの空から垣間見たマッキンリー

ある冬の日の夕方に、フェアバンクス郊外の原野を小型飛行機で飛んでいた。フェアバンクスはアラスカ第二の都市で人口約3万5千人なのだが、ちょっと町を外れると、未開の大自然が果てしなく続く…。
小型機は山の間の谷間に沿って、蛇行しながら流れるチナ川の上空を風に揺られながら飛んでいく。真冬の山は雪に覆われ、凍りついた川には雪が積もり、上空から見ると白い一本の道のようだった。山がどこまでも続いていて、人間の痕跡はほとんど見当たらない。

太陽がゆっくりと地平線に沈んでいき、暖かいオレンジ色の光が空を包む…。はるか先の地平線上にアラスカ山脈の峰が険しくそびえていた。さらにその先に、なんと北米最高峰・マッキンリーが姿を現した!夕日に照らされて、ぼんやりと浮かび上がるシルエットはまさにデナリ(マッキンリー)の相貌をしていた。

日が沈むと辺りが淡いパステルカラーに包まれ、近くの峰を桃色に照らし出した。夢の中にいるような美しい瞬間だった。

2011年2月17日木曜日

アイス・ホテル(アイス・ミュージアム)

アラスカの厳しくも美しい大自然を追い続けて早くも数ヶ月…。今回は自然の恵みから生まれた氷の芸術を紹介したいと思う。

アラスカ第二の都市、フェアバンクスから約90キロほどの外れ、チナ・ホットスプリング・リゾートの中に建つ“オーロラ・アイス・ミュージアム”には、ゴッシク大聖堂をテーマとした氷のインテリア―氷で作られたシャンデリアが天井からつる下がり、80体にも及ぶ氷の彫刻が所狭しと飾られている。


中でも、4つの客室からなるアイスホテル・ルームにはそれぞれ、“ホッキョクグマ”“クリスマス”“塔”“女王の間”をテーマに氷のベッドや家具が置かれていて、“女王の間”の中には氷のトイレまで作られているのだ。そもそもこのアイスミュージアムは、アイスホテルと呼ばれていたのだが、スプリンクラーを設置していないため、消防法によりホテルとは呼べないそうで、アイスミュージアムと改名したそうだ。とはいえ、現在でもホテル客室として、1泊575ドルで貸し出しているとのことだ。575ドルの中には、普通のホテルの客室も付いてきて、ゲストはアイスルームとホテルルームを行ったり来たりできるそうだ。アイスベッドには、真冬用の厚手の寝袋が付いてくるという。ただし、氷のトイレはあくまでも芸術のひとつだから、ゲストはホテルルームの中の本物のトイレを使用しなくてはならないとのことだ。このアイス・ミュージアムに一晩貸切で泊まれて、575ドルは安いと考えるべきなのか…?
アイス・ミュージアムの目玉といえば、アイスバー。すべて氷で作られたバーのカウンターと椅子、周りを囲む氷の柱…、これだけでもかなりの芸術だ。特にすごいのは一つ一つ氷で作られたグラスでカクテルを注文できるのだ。

アイス・ホテルルーム、アイスバーの周りには約80体にも及ぶ氷の彫刻で飾られている。戦う騎士、2階建ての高さの塔、氷のチェス等々…は、冬の間に近くの池から切り取られてきた氷のブロックから彫られているそうだ。この氷の芸術はすべて、ワールド・アイス・チャンピオンの夫婦スティーブ&ヘザー・ブライスの作品だ。細部にわたって細かく彫られた氷の芸術は一見の価値あり。


2011年1月21日金曜日

冬のアラスカ、バラ色の光

真冬のアラスカの長い夜を飾るオーロラの輝きはよく知られているが、極北の冬にはもうひとつの美しい光の世界がある。一日わずか3-4時間だけ差す淡いピンク色の日の光だ。
1月中旬の日の出は午前10時半頃…。地平線のほんの少し上にゆっくりと時間をかけて顔を出した太陽は、南東の空をネオンピンクに染めて、反対側の雪山をバラ色に照らし出す。地球上のほとんどの地域ではほんの数分にすぎない朝焼けの瞬間が、極北の地では延々と続く。地平線上にとどまった太陽は、そのまま地平線をかすめるようにゆっくりと動く…。北西の山の頂上を照らすバラ色の光は、3-4時間かけてゆっくりと北東の峰に移動していく…。午後3時半頃、太陽はそのまま地平線を離れることなくゆっくりと沈んでいってしまうのだ。アラスカ内陸、滞在中のフェアバンクス郊外では11月中旬から直射日光が差さずに、長い朝焼けから長い夕焼けだけの短い一日が終わる…。夢のような長い朝焼けの時間は、写真家にとってはありがたい時間だ。

厳冬のアラスカでの撮影は、なかなか厳しいものがある。なにしろ零下30度を下回る寒さの中では、防寒服に身を固めているから、身動きがとりづらい。三脚は氷のように冷たいし、厚い手袋をはめてカメラをセットするのはなかなか至難の業だ。やっとのことで準備を終え、撮影に入って10分もすると、足の先が寒さで痛み出してくる。フィルターを支える指が、手袋の中にもかかわらず凍えだす…。カメラや三脚が霜で覆われてしまう。足踏みをして何とか持ちこたえようとするのだが、寒さは増すばかりだ。早急に撮影を切り上げ次の場所へ移動する。

こんなに厳しい寒さとはいえ、極北の自然の見せてくれる美しさには特別なものがある。

2010年4月30日金曜日

レイク・タホ―4月の雪景色


4月上旬、すでに春の気配が漂うワイオミング州ジャクソンホールを引き上げ、一年ぶりにレイク・タホを訪れた。友人に会ったり、ギャラリーのオーナーとミーティングをしたりと予定がぎっしり詰まっていたものの、美しいタホの自然の中での撮影を期待していたのだが・・・。ところが、タホに着くと同時に雪が降り始め、一晩中降り続いてしまった。一晩どころでは収まらず、ほぼ丸一週間降り続きあたりはすっかり雪景色。雪が降ってもすぐに青空に戻るはずのタホが、一週間ずっと厚い雲に覆われてしまった。日の出や夕日の撮影どころか、青空の下でエメラルド色に輝く湖の撮影すら出来ずにいた。

雪景色のタホの美しさに改めて感動はしたものの、やっぱり太陽が恋しい…。それでも、ただ1日だけ太陽がほんの少し顔を出してくれた。この機を逃すものかと、Sand Harborへ出かけた。Sand Harborのビーチには丸い岩が転がっていて、いかにも"タホらしい"風景だ。お気に入りの撮影場所のひとつだ。夕日の瞬間、空が朱色に染まることを期待しつつ、カメラをセット・・・。地平線近くの雲が赤く染まるか、逆に夕日を灰色に隠してしまうかきわどいところだ。灰色の雲が勢いを増してきた。それでも太陽は雲の間から金色の光を照らし出し、レイクをゴールデン・カラーに輝かした!神秘的な美しさに感動しながら、シャッターを切った。
一年ぶりに訪れたBlack Pearl Gallery。このギャラリーには2008年からお世話になっている。
レイク・タホでの1週間の滞在はあっという間に終わってしまい、現在シアトルにてワイオミングからの写真の編集中。シアトルはすっかり春、新緑と桜の季節だ。束の間の休憩、さまざまな雑用を終え、5月中旬からアラスカに向けて出発。今回はフェリーにて南東アラスカの港町、ケチカン、ピータースバーグ、スキャグウェイを経て、アラスカ州都ジュノーよりグレーシャー・ベイ国立公園へ向かう。グレーシャー・ベイに約3ヶ月滞在予定だ。