2014年10月5日日曜日

ヨーロッパ最高峰・モンブラン

 
ヨーロッパ・アルプスの最高峰、「白い山」を意味するモン・ブラン(Mont Blanc 4,810.9m)はフランス、イタリア、スイスをまたがる国境に位置する。青い空の下、氷河を抱く白いモン・ブランの頂上は、ため息の出るような絶景だ。おなじみのケーキ、モン・ブランはフランス側から見えるこの山をモデルに作られたのだ。

この度、モン・ブランを中心としたアルプスの自然を撮影するために、初のヨーロッパへ向かった。カメラ機材一式を背負って、モン・ブラン周辺を一周するトレイル、ツール・ド・モンブラン(Tour du Mont Blanc)を歩く。全行程約160キロ、約2週間かけて、峠を越え、山野草の咲く高原を歩き、放牧地を横切り、フランスからイタリア、そしてスイスを通過し、フランスへ戻ってきた。

モン・ブランの周りをぐるりと一周しながら、様々な角度からこの山を撮影してきたが、やはりフランス側からの眺め、白く丸みを帯びたモン・ブランの姿が一番だ。雨が止み、雲が晴れ、シャモニーの街を見下ろすように現われた白い山は感動的だった。

モン・ブランぐらいの高峰になると、雲を引き寄せ、山岳特有の天気を作り出してしまう。アラスカのマッキンリー同様、雲の中に姿を隠してしまうことが多いのだ。モン・ブランの撮影には運と忍耐が必要だ。
 
ありがたいことに、モン・ブラン周辺には便利な交通機関が整っており、トラムやケーブルカーを利用すれば、撮影に最適な絶景地点までほんの数分で行くことができる。

モン・ブランの頂上を間近に撮影するために、エギーユ・デュ・ミディ(Aiguille du Midi)の展望台へ向かった。標高3,842mのエギーユ・デュ・ミディの頂上にある展望台にも、ケーブルカーとエレベーターで簡単に着いてしまう。展望台に着いた時には、霧で視界は真っ白。冷たい風の吹く中、待つことしばらく…。霧の向こうにモン・ブランの巨峰が少しづつ見え隠れし始めた。じらされているみたいだ。見えては隠れ、をしばらく繰り返したあと、霧のベールが完全にはがされて、白いモン・ブランが青空を背景に姿を現した。太陽の光を浴びて白く輝くモン・ブランに手が届きそうだ。この期を逃さず、と撮影を続ける…。その後しばらく、モン・ブランは隠れることなく撮影を許してくれた。

こちらはイタリア側から見たモン・ブラン。イタリア語では、モンテ・ビアンコ(Monte Bianco)。どちらも白い山という意味だ。フランス側で見た山とはぜんぜん姿が違う。数日間降り続いた雨が止み、やっと姿を現した。朝日を浴びて赤く輝くモン・ブランの撮影に成功。

こちらも、イタリア側。アルプスの山中にはたくさんの遺跡が存在する。

フランス側。ブレヴァン山頂(標高2,525m)から、モン・ブランが真正面に見える。降り続いた雨が止み、アルプス滞在の最終日に、やっと姿を現してくれた。

次回もアルプスからの写真を初回予定。ぜひ、見てくださいね。


2014年10月2日木曜日

オーロラの季節

 
9月下旬、アラスカはすっかり晩秋。白夜の季節が終わり、夜の暗闇が戻ってきた。早くもオーロラの季節がやってきた。2週間ほど続いた雨が止み、久しぶりの快晴。オーロラの活動も活発で、北極圏周辺はもちろん、アンカッレジ北部でも見られるという予想。

アンカレッジから北へ100キロほどの湖のほとりでオーロラを待っていた。この時期はまだ暖かく、湖の水もまだ凍っていない。水面にうつるオーロラを撮るなら、この季節だけだ。あと1-2週間もすれば、氷が張り始めてしまう。晴れ渡った空には肉眼で天の川が見えるほどの明るい星がきらめき、風ひとつない湖面にも星空が広がっていた。
 
すでに午前2時を過ぎた頃、地平線にうっすらとした光が現れはじめた。光は少しづつ明るさを増し、淡い緑のアーチになった…。アーチ状のオーロラは、波のようにゆっくりと揺れながら、湖の上に移動していった。鏡のような湖面にも、光の帯が揺らめいている。光は徐々に明るさを失い、ゆっくりと消えていった。また新しいアーチが現れ、明るさを増し、光の帯を湖面に描き、また消えていった…。現れては消える、という静かなオーロラのショーが静かなアラスカの原野で人知れずに繰り返されていた。オーロラの再来は、これからやってくる長い冬の始まり…、大地が雪に覆われる日もそう遠くない。
 
次回は、ヨーロッパ・アルプスの写真を掲載予定。

2014年7月2日水曜日

アラスカ、チュガチ山脈の夏


アラスカはただいま夏の真っ盛り・・・。短いけれど、最も美しい季節だ。
アンカレッジ周辺の山々は白夜の太陽の下で緑に輝く。山頂付近に積もった雪が急速に解けだし、山肌に無数の小さな川を作り出している。

チュガチ山脈から、最新の写真を紹介・・・。


いよいよ明日、ヨーロッパ・アルプスに向けて出発します。今後のブログにご期待ください。

2014年6月18日水曜日

アラスカ、キナイ山脈の鏡




今年は春の訪れが早かった。普通なら、やっと雪が解けたけど、まだまだ寒さの続くはずの5月上旬に、すでにアンカレッジ周辺は新緑に覆われていた。

1ヶ以上も早い新緑の季節、そして6月には気温もグングン上昇し、日照時間も延びてすでにアラスカは夏の真っ盛り。一日20時間以上の太陽の下、植物は瞬く間に成長し、原野には早くも野草が次々と花を咲かせている。アラスカで最も美しい季節の訪れが予定以上に早く来てしまったから、撮影をする側も忙しい日々を過ごしている。

キナイ半島に位置する大きな氷河湖、キナイ・レイクはサーモン釣りで有名なキナイ川の源流となる湖として知られているが、晴れた日の湖は息を飲むような絶景なのだ。深いエメラルド色の水面が波ひとつなく穏やかに広がり、対岸のキナイ山脈を湖面に鏡のように映し出す…。

自然写真を始めた頃から、水面に映る風景にはいつも特別な魅力を感じていた。

早朝、前日まで降り続いていた雨が止み、青空が顔を出し始めていた。風は全くなく、湖面は波ひとつない…、静かだ。日の出間もない太陽が、雲の間から対岸の山脈を照らし始めた。雲の隙間から射す細い光は山の頂上から下へと、ゆっくりと移動していった。滑らかな湖面は、山を照らす光の模様をしっかりと映し出している…。誰もいない湖畔で、時の経つのも忘れ、原野の見せてくれる美しい瞬間を見つめていた…。

こちらはキナイ半島北部の湿原に写る氷河と山脈。

2014年4月2日水曜日

マッキンリー上空に舞うオーロラ


厳しい寒さの続く2月初旬、アラスカからカナダ、さらにアメリカ本土にまで実事なオーロラが出現。この時を待っていた。北米最高峰マッキンリー山上空に舞うオーロラを撮影すべく、アンカレッジから北へ向かった。幸い、空は見事に晴れ渡り、雲ひとつない。早くも午後9時ごろから北の空にうっすらとオーロラが弧を描き始めていた。こんなに早く出ているということは、良いオーロラの夜になる前兆だ。

アンカレッジから約2時間ほど北上すると、マッキンリー山の南壁が見え始める。絵葉書やガイドブックなどで有名なマッキンリーの写真のほとんどは、デナリ国立公園内の北側から撮影されたものが多いのだが、その有名な北壁の見える一角は、冬の間零下50度を下回る厳しい原野にあり,園内唯一の未舗装道路も深い雪の下に隠れ閉鎖されている。極地の冬に旅慣れていて、犬ゾリかスノーモービルの達人でもない限り、真冬のデナリの原野を訪れるのには限界がある。今回は、アクセスしやすい南側からの撮影になる。 


ようやくマッキンリー山の見える場所にたどり着いた頃には、うっすらと出ていたオーロラがさらに薄くなり、消えてしまった。 

アラスカ山脈を一望できる場所に移動したものの、オーロラは一向に現れない…。夜11時を過ぎ、寒さが増してきた。見事な星空の下で30分ほど待っていたが、空は静まり返ったままだ…。とりあえず、車まで戻って待つことにする…。長い長い夜が始まった。 

翌朝5時、ついにオーロラが出始めた。防寒具を身につけ、カメラ機材を背負い、すでに選んでおいた場所へとトレイルを走る。空には薄い緑色のオーロラがゆっくりと光の筋を伸ばし、ゆらゆらと動き出した。


一晩中頭上を照らしていた明るい月が沈むと、辺りは急に暗くなり、オーロラが輝きを増した。緑色の光のカーテンの下に、淡いピンクが肉眼でも見えた。
見事な光のカーテンがマッキンリーをはじめとするアラスカ山脈の上空に舞い続けた。あまりにも完璧なショーを目前にひたすらシャッターを切り続けた。 

マッキンリーの上をドラゴンが舞う。 

オーロラの見事なショーは1時間ほど続き、早朝6時ごろうっすらと消えていった…。

2014年2月25日火曜日

楽園のイメージ ハワイ島の海亀


半年ほど前に初めてハワイを訪れて、南国特有の自然を初めて撮影した。それ以来、ハワイでぜひ撮りたい画像があった。暖かい夕日に染まる海と夕日に照らされた海亀-そんなイメージに合うロケーションを調べ続け、再びハワイへ舞い戻った。

12月初旬、厳しい寒さと長い夜の続くアンカレッジから、ハワイ島のコナヘ飛んだ。わずか6時間のフライトで、太陽がさんさんと降り注ぐ常夏の島に到着。

日没まで約2時間、ハワイ島西海岸、コナから20分ほどのビーチを訪れた。この時間はちょうど潮が引いていて、海底に眠る古い溶岩が露出していた。漆黒の岩肌を覆う藻が鮮やかな緑色をバックに加えてくれた。

潮溜まりの縁に海亀を発見!よく見るとまだまだ複数の亀たちが、岩辺に点在する潮溜まりの近くで休んでいた。

1頭1頭の亀を訪ねて、周辺の環境から、後ろの風景までゆっくりと観察。その中から、モデルになる1頭を選出。その海亀を取り囲んでいる潮溜まりの配置が気に入った。太陽は西の空に傾きはじめていた。他の野生動物と違って、海亀はほとんど動かない。写真撮影にはありがたいモデルだ。三脚を立て、慎重に構図を選ぶ…、その間この海亀はゆっくりと目を開け、スローモーションで首だけを動かし、またゆっくりと目を閉じただけだった。

太陽が水平線に近づくにしたがい、空の色が黄金から明るいオレンジへと変わった。小さな雲を通して、光が光線となり、海を照らした。空の色は刻々と変わっていく。

日没直前に、ラベンダー色の光が辺りを染めた。自然が見せてくれる神秘的な瞬間だ。赤道に近い南国での日没はあっという間だった。

2013年11月22日金曜日

紅葉のチュガチ山脈

 前回に引き続き、アラスカの紅葉の写真を少し…。

11月中旬といえば、まだまだアメリカ本土を始め世界各地でも秋の季節が続いているところだが、アラスカはすっかり冬景色になってしまった。アラスカに秋が訪れるのは早い。短い夏が8月下旬には終わりを迎え、森やツンドラが徐々に色づき始め、9月半ばには紅葉のピークを迎える。

9月中旬に、アラスカ東部のランゲル山脈周辺の見事な紅葉の写真を撮影してきたのだが、その後もアンカレッジ北部のチュガチ山脈ではまだまだ木々が鮮やかな秋の色を残していた。すでに頂上付近には薄っすらと雪が積もりはじめたものの、まだまだ森は明るい黄色に輝き、低木は濃い紅色に染まっていた。
アラスカ原生の野生のバラ、プリックリー・ローズ。

ナンシー湖の湿原も秋色に染まる…。
 
チュガチ山脈の峰、ツイン・ピーク。
 
北の大地の秋は格別に美しい。わずか数ヶ月の間に春から夏へ、そして秋へと季節はめまぐるしく移り変わる。グランドフィナーレとばかりに、自然は鮮やかな原色で季節の終わりを飾り尽くす。あれから2ヶ月、11月中旬のアラスカは雪と氷に覆われている。厳しい寒さと長い夜の闇が続く冬が始まったばかりだ。